ブッシュ米大統領 議会新農業法案を拒否 現行法を1年延長

農業情報研究所(WAPIC)

08.5.14

  米国・ブッシュ大統領が13日、議会が8日に合意した新農業法案を拒否、現在の農業法を1年間延長適用すると発表した。

 http://www.whitehouse.gov/news/releases/2008/05/20080513-2.html

 大統領声明は、拒否の理由を次のように説明する。

 「米国農業経済は絶好調で、いまこそ補助の対象を改善し、真の改革を進めるべきときだ。農業所得は今年、この10年の平均を50%も超えると予想される。それにもかかわらず、議会は、年に150万ドル(1億5700万円)も稼ぐ農家の所得を補助することを米国納税者に求める。農業所得が記録的なこのときにそうすることは、無責任であり、必要な農業プログラムへの米国人の支持を危うくする。

 作物価格は昨年来、平均して20%上昇した。それでも、議会は、大部分の作物の支払レートを引き上げ、価格が非常に高いときにさえ発動できる新たな補助金を創設することを望んでいる。法案は、作物が後に高価格で売られるときにさえ補助金を集めるやり方を止めることに失敗している。食料危機の真っ最中、食料援助を緊急利用に振り向ける我々の能力も制限している。政府の[環境]保全の提案も値切っている。貿易歪曲的補助金を増やすことで、法案は外国市場を米国農産物に開放させる我々の能力も削いでいる。国内消費者に対しては高い砂糖価格を保ち、納税者には一握りの砂糖生産者の補助をさせるとんでもない新たな砂糖補助プログラム(注)も作り出した。」

 これは、法案を支持できない理由のほんの一部だ。こんな法案なら、米国農業と米国納税者にとって、現行法の方がまだましだと言う。 

 (注)米国内で使用される砂糖の85%は米国産でなければならない。余った米国砂糖はエタノールに加工される。


 WTOドーハ・ラウンドの年内妥結のためには、米国大統領選挙戦が本格化する前に農業交渉モダリティー合意が不可欠という。この切羽詰ったこの時期に、米国現行農業法の1年延長が決まった。年内妥結への道が消えたということだ。貿易交渉の行方を左右するのは、WTO事務局長や交渉議長ではなく、米国政府でもなければEUでもない、有力途上国でもなく、憲法で通商交渉権限を与えられ・常に議員の地元の利害が優先される米国議会である。人々は、まだこのことに気づかないないのだろうか。