飼料コスト高騰で米国食肉大手が軒並み事業縮小 工場畜産に転機?

 農業情報研究所(WAPIC)

08.6.28

 サンダースン、タイソン、ピルグリムス・プライド、スミシフィールド・フーズ等、米国鶏肉・食肉生産者が軒並み、鶏や家畜を飼うための穀物の高コストで苦戦している。飼料原料価格が高騰、元のレベルに戻る見通しがまったく立たないなか、これら会社は現金追加や雇用削減のための事業売却や、現金を留保するためのプロジェクト延期に走り始めた。

  米国鶏肉大手のサンダースン・ファーム(SAFM)は、週に125万羽を処理するはずだった鶏肉加工場の建設の無期限延期を決めた。主要飼料成分であるトウモロコシと大豆ミールの価格高騰で将来のコストを予想するのが難しくなったためという。

 食肉最大手のタイソン・フーズも、カナダでの食肉加工事業からの撤退計画を発表したばかりだ。そのレークサイド・ファーム・インダストリーを、食肉工場、飼育場、肥料を含めて1億600万ドルでXL Foods社に売却する計画という。

 ピルグリムス・プライドは今年初め、一つの鶏肉工場と六つの流通センターを閉め、七面鳥ビジネスを売り渡した。

 タイソンはネブラスカ・ヨークの食肉工場を閉鎖、カンザス・エンポリアの牛と畜事業を停止した。豚肉生産者・スミスフィールドは、牛肉加工・牛肥育事業をブラジルのJBS S.A社に5億6500万ドルの現金で売る。

 26日の取引で、サンダースンの株価は4%下がって37.52ドルとなった。ピルグリムスは1.6%下げの14.53ドル、タイソンは2.1%下げの14.68ドル、スムスフィールドも2.7%下げの24.65ドルだ。

 Sanderson Farms Postpones Plans For Chicken Plant,Cattle Network,6.27
 
Livestock Highlights: Beef Dispute, Mandatory COOL, Tyson,Cattle Network,6.27

 戦後米国の”畜産革命”で勃興し、いまや世界中に広がった”工場畜産”に転機が訪れようとしていると言うのは早計だろうか。

 工場畜産は、そもそも戦後米国で安価・大量に生産されるようになったトウモロコシなしにはあり得なかった。狭い空間に家畜を囲い、予め調合された穀物=トウモロコシを主体する配合飼料を自動給餌する”家畜工場”は、安価で大量のトウモロコシなしには成り立ち得ないものである。この前提が崩れようとしている今、工場畜産が転機に直面しているの言うのは、決して言いすぎとは思えない。

 EUでは、遺伝子組み換え(GM)飼料作物が使えないから飼料コストが高く、世界市場で競争できないという不満の声が渦巻く。しかし、大量の穀物を使う畜産は、既に大半の飼料原料がGM作物となっている米国でさえ成り立たなくなりつつある。今は、畜産革命の延長ではない、根本的に異なる第二の畜産革命、あるいは食文化革命(肉消費減らし)が必要なときだと言えないだろうか。

 「地域、あるいは有機の、あるいはまた草で育てられた動物製品の支援や代替生産方法の導入により、人々、環境、動物そのものにとってより健全な方法で生産することが必要だ」(→ワールドウォッチ報告 工場畜産の世界的拡散と環境・健康・コミュニティー破壊に警告,05.10.1)。

 それで肉の値段は上がっても、消費者はつましく食べることでメタボの脅威から解放される。生産者も、販売量は減っても、コストに見合った高い単価を確保できる。