EUが2008年米国農業法を分析 貿易歪曲的国内助成が激増の恐れ

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.6

 EU(欧州委員会)が新設の収入保証プログラム(ACRE、平均作物選択プログラム)に焦点を当てた2008年米国農業法(食料・保全・エネルギー法)の影響分析を発表した。米国農業政策は、貿易歪曲的な国内助成を再び増加させることになる恐れがあるという。

 2008年農業法は、従来からのローンプログラム、作物収入保険、固定直接支払、カウンターサイクル支払(CCP)に加え、ACREと呼ばれる新たな収入保証プログラム を導入した。欧州委員会は、これこそ米国新農業法の目玉だとし、それが米国の国内農業補助金支出に及ぼす影響を分析する。

 これは、現実の農家所得が保証されたレベルを下回る分を支払うことで、農家の収入が最近の過去(過去2年の平均)のレベルを下回るリスクに対処する”カウンターサイクル”収入プログラムである。農家はCCPの代わりに、このACREを選択できる。ただし、これを選択した農家は、新農業法が有効な2012年まで、CCPは受け取ることができず、ローンプログラム融資単価は3割、固定直接支払も2割減額される。

 多くの農家はどちらを選ぶか、なお決定しかねているようだ。価格がどうなるかはっきりせず、どちらが有利か見極めがつかないからだ。

 欧州委員会は、ACREが最近の高価格と収量に基づく収入保証を固定する高価格の環境の下で設計されたもので、新農業法成立以後の価格下落にもかかわらず、綿花を除けば旧来のプログラムに勝る収入保証を提供する 、その上、それは過去の作付面積に基づくCCPと異なり、現在の作付面積を反映するから、多くの農家がACREを選ぶことになろうと推測する。

 欧州」委員会は、2009/10年の価格レベルが2006/07年(急騰前)のレベルに落ち込むならば支払いレベルはどうなるかを計算した。ACREには、トウモロコシ、小麦、大豆、ソルガム、大麦(綿花、米、ピーナツを除く)にかかわる80%の農家が参加すると仮定した。

 2007/08年価格と2008/09年予想価格の平均に基づく2009年”保証”価格は、ブッシェルあたりでトウモロコシが4.05ドル、小麦が6.59ドル、大豆が9.55ドルになる。もし2009年市場価格が2006年レベルに下がれば、2009/10年のACRE支払いは102億ドルの巨額になる。この価格が2012年まで続いたとしても、保証収入は1年で10%以上変えることができないという法の規程があるから、高レベルの支払いが5年間にわたって続く。

 そして、ACREは現在の価格と収量に関連し・現実の作付面積に基づく作物特定支払いだから、WTOで削減対象となる「イエローボックス」補助金に分類されることになろうという。

 The New US Farm Bill: Zooming in on ACRE,European Commission,Februaly 2009.
  http://ec.europa.eu/agriculture/publi/map/01_09.pdf

 価格が2006年レベルまで下がることはありそうにない。とはいえ、2009年”保証”価格を相当程度下回ることは十分にあり得ることである。 この分析はWTO農業交渉にも波紋を投げかけることになるだろう。