農業情報研究所>農業・農村・食料>北米>ニュース:2013年8月29日
世界の穀倉地帯を支える地下水源が50年以内に消滅の恐れ 米国オガララ帯水層の新研究
米国最大の小麦生産州であるカンザス州西部のハイ・プレーンズ帯水層(オガララ帯水層)を仔細に調べた環境科学・工学専門家による新たな研究報告によると、米国のトウモロコシ、大豆、小麦などの農作物栽培や牧畜にとって死活的に重要な地下水源が急速に枯渇に向かっており、現在のトレンドが変わらないとすれば、今後50年以内に消滅すると予想される。
水供給の制約は近い将来に食料生産に重大な影響を及ぼし始めるだろう。ただし、水利用の削減次第では農業生産のピークを何十年も先延ばしすることはできる。例えば、地下水脈からの水利用を20%減らすと農業生産は15-20年前のレベルにまで減るが、農業生産ピーク時は2070年まで延びるという。
報告は、「淡水消費はまだ地球レベルでは危険水域を超えていないとはいえ、水不足のために多くの地域で作物収量が減り始めており、グローバルな食料安全保障が世界中の関心事項となっている」、「社会が予見できる将来に起こり得る地下水利用減少の帰結に備える必要があるのは明らかだ」と言う。
David R. Steward et al, Tapping
unsustainable groundwater stores for agricultural production in the High Plains
Aquifer of Kansas, projections to 2110,
PNAS 2013 ; published ahead of print August 26, 2013
abstract:http://www.pnas.org/content/early/2013/08/14/1220351110.abstract
日本も、食料安全保障を米国農畜産物の輸入に頼る従来の”慣行”からの脱却を真剣に考えねばならない理由がまた一つ増えた。