農業情報研究所


有機農業は環境に優しいースイスの研究者

農業情報研究所(WAPIC)

02.6.3

 スイスの研究チームが有機農業は通常農業よりも環境に優しいことを実証する研究結果をScienc誌に発表した(Paul Mäder et al,Soil Fertility and Biodiversity in Organic Farming ,Science,31 May 2002,Vol. 296 No. 5573,p.1694)。この研究は、中欧における有機農業と通常農業との21年間にわたる比較研究に基づくものである。従来、有機農業は環境に優しいという主張はあっても、これを裏づける長期的研究は存在しなかった。この研究は、こうした主張に、初めて根拠を与えたものといえよう。

 チームは、ポテト、大麦、冬小麦、ビート、クローバーについて研究、作物収量は通常農業に比べて平均21%低いが、肥料とエネルギーの投入は34%から53%、農薬投入は97%少なくて済むという結果を得た。この結果は、有機農業が通常農業よりも資源を有効に利用しており、長期的には商業的にも持続可能であることを示唆するであろう。有機圃場には害虫を食べるクモや蜂、ミミズが多く、その土壌には栄養をリサイクルする微生物が多いことも分かった。土壌の肥沃度は高まり、生物多様性に恵まれていることから、このシステムは外部からの投入を減らすことができる。

 ただ、Independent紙によると(New analysis:Organic methode are viable,but benefits to environment remain in the soil,Independent,5.31)、昨年、Nature誌で有機農業は環境に優しいという通説に疑問を呈したエジンバラ大学の植物生化学教授・Anthony Trewavasは、この研究がはっきりさせたのは、長期的影響を評価するには一層の比較研究が必要であるということだと言う。彼によれば、この研究結果は、農場の規模や土壌、気候が異なるイギリスやその他の国には適用できない。この研究は通常農業の最近の技術革新ー不耕起直播を考慮していない。土壌にとっての最大な危険は、耕起のために土壌生物が撹乱され、雨で栄養分が流出、侵食が促されることであるが、有機農業は除草のために耕起が欠かせない。

 初めての長期的研究も、通説への疑念を消し去ることはできないようである。

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