ブラジル政府食料購入計画、有機農業産品買上げ価格を引き上げ

農業情報研究所(WAPIC)

04.6.19

 ブラジル連邦政府の食料購入計プログラム管理委員会が家族農民の生産する有機農業産品の買い入れ価格を30%引き上げると決定した。ブラジル政府の通信企業・Radiobrásが世界に向けて発信する国際ニュースサービスが伝えている(Government purchases valorize organic agriculture,Portal da Cidadania,6.18)。

 農薬なしで生産される食料品は少量だが需要はコンスタントに伸びている。委員会は、ブラジルにおける環境保全農業(エコロジカル・アグリカルチャー)を奨励するために、この決定を行った。「ゼロ・ハンガー」などの社会プログラムで使用される有機農業産品に支払われる価格を引き上げるのが妥当と判断したという。家族農業は、農村家族の所得引き上げの手段となっている国のエコロジカルな生産の70%を担っている。

 このプログラムは、農地開発、農業、財務、計画、社会開発、飢餓撲滅の諸省が支えている。プログラムが創始された昨年8月以来、有機産品購入のために2億レアル(1レアル=40円ほどか?)を支出した。また、家族農業強化国家プログラム(Pronai)は有機部門に向けた特別貸付枠を持ち、50%以上をエコロジカル農業への投資に関心を持つ農家に貸し付けている。

 有機農村生産者組合連盟会長のJoe Carlo Valleは、雇用確保の観点から、この価格引き上げを正当化している。有機農業は多量の労働を必要とし、「これは大量の失業人口を抱える国の利益になる。我々は一層多くの人々を利用、社会問題を解決する」と言う。

 先頃、ドイツの非政府組織・Söl Ecology and Agricultureが、ブラジルの有機農業面積は84万4千100haに達し、米国、イタリア、アルゼンチン、オーストリアに次ぐ世界5位の規模を持つことを明らかにした(Brazil is fifth among world's countries in area used for organic agriculturePortal da Cidadania,6.17)。ブラジル輸出促進庁(Apex)のデータによると、ブラジル農民は今年、1億1千500万ドルの有機産品を輸出することになる。農地開発省の家族農業局は、有機産品には巨大な市場があり、ブラジル家族農民は堅固な足場を獲得できると言う。先のJoe Carlo Valleは、こうした数字は確認するが、有機農業をめぐる議論は社会の全部門に拡張される必要があると強調する。国内市場は拡大しつつあり、スーパーでも稀ではなくなったが、外国市場ほどには拡大していない。

 食料購入プログラムは、10万家族が直接購入方式または前払い購入方式の利益に与ると推定している。これを通して、農民は、一家族当たり797ドルを販売できる。直接購入方式は、ゼロ・ハンガーなどの社会プログラムに使用するために、また戦略在庫を築くために、家族農民が政府に直接販売できるようにするものだ。前払い購入方式は、作付け前にでも、家族農民が国家供給会社(Conab)の設定する価格で生産物を販売できるようにする。収穫時の価格が支払われた価格よりも高ければ、農民は市場で販売することもできる。

 この努力も、貧困を助長すると評されるモノカルチャー的輸出農業の開発の圧倒的な流れにいささかのブレーキをかけるものともならないだろう。大豆面積だけでも、昨年から今年にかけて300万haも増えている(アマゾンを破壊し、貧困を助長するブラジル輸出拡大戦略,04.4.9)。だが、貧困・飢餓の撲滅を目指すルーラ政府の社会開発重視の姿勢を示すものとして、この有機農業奨励策に注目しておきたい。