欧州委員会 有機生産に関する新規則案採択 0.9%までのGMO混入を容認

農業情報研究所(WAPIC)

06.1.10

  欧州委員会が昨年12月21日、有機生産に関する新規則案を採択した。新規則案は、2004年6月に欧州委員会が提案した有機食品・農業に関する欧州アクション・プラン(EAP、欧州委員会、EU有機農業アクション・プランを提案、GMO汚染基準は通常農業並み,04.6.12)に沿うもので、これは、同年10月の農相理事会も支持している(http://ue.eu.int/ueDocs/cms_Data/docs/pressData/en/agricult/82273.pdf)。

 European Commission,Organic Food: new Regulation will improve clarity for consumers and farmers 

 新規則の詳細はなお不明だが、報道発表は、これは次のような規程を含むと言う。

 @有機生産の目的と原則を地方的条件と発展段階を考慮して定める。

 Aこれらの目的と原則が有機畜産、水産養殖、植物・飼料生産、有機食品生産のすべての段階で平等に摘要されるように保証する。

 B遺伝子組み換え体(GMO)に関するルールを明確にする。特にGMO含有量に関する一般基準を摘要、GMO製品は、偶然に0.9%まで混入した場合を除き、有機と表示できない。また、種子に関する特別の基準を採用できる。

 C有機生産の”共通の概念”を促進するために表示と広告に制限を課す。有機食品の生産者はEUの有機ロゴを利用するかどうかを選択できる。これを選択しない生産者は”EU-organic”という統一表示をせねばならない。このような表示が許されるためには、最終製品の最低95%が有機製品で構成されねばならない。

 Dコントロール・システムはリスクベースのアプローチを強化、すべての食品・飼料に摘要されるEU食品・飼料コンロトール・システムに揃えることで改善する。

 EEUルールが最高度の基準を確保することで有機製品の自由流通を強化する。コントロール・システムの公平性、基準の相互認証を強化し、コントロール機関がより厳格でないルールを許容する余地を減らす。

 F永久的な輸入ルールを開発する。有機製品の輸入は、EU基準を満たすか、原産国からの同等性の保証があるかぎり、許される[現在の規則では、EUへの輸入は、EUが輸出国の有機の要件がEUシステムと同等であると認めるか(7ヵ国)、EU各国がケース・バイ・ケースで許可する場合(90ヵ国以上)に認められてきた]。

 新規則は2009年1月から摘要される。ただし、新たな輸入制度は2007年1月から摘要される。

 マリアン・フィッシャー=ボエル農業・農村開発担当委員は、新規則により、「消費者が有機製品を確認し、その環境・動物福祉上の便益を理解するのを容易にする。現在のルールは、一層簡素で透明なルールに置き換えられる。それは、消費者が購入するものについて知り、農業者が従うべきルールを正確に知ることを保証するために、有機生産の目標と原則を定め、表示ルールを明確にし、輸入を規制する」と言う。

 しかし、これにより、アクション・プランの「EU有機農業の進行中の発展を助長する」という目的は達成できるのだろうか。最大の問題は、0.9%までのGMO混入を認めたことにある。それは、有機食品に対する消費者の信頼を大きく損ない、有機部門全体の発展を阻害する恐れがある。

 地球の友・ヨーロッパは、「EUの有機部門は、遺伝子汚染のいかなるリスクもなく発展し、その経済的成長を確保する手段を与えられねばならない。欧州委員会は、GM作物と慣行・有機農業の共存に関するEU規模の厳格な立法を拒み続けている。また、純粋に経済的な関心に固執、共存を考えるときに環境・健康問題を考慮に入れることを拒否している」と批判する。

 http://www.foeeurope.org/press/2005/HH_22_Dec_contamination.htm

 アイルランド・ウィックローのブルークロッジホテルにアイルランド唯一の有機レストランを持つエヴァン・ドイル氏は、この提案で商売ができなくなるかもしれない、有機農民にも大打撃だ、「人々は有機食品を信用しなくなるだろう」と言う。

 Organic growers fear GM 'pollution',The Irish Independent(要登録),1.6
 http://www.unison.ie/irish_independent/stories.php3?ca=9&si=1537789&issue_id=13515