ウォルマートが有機食品ビジネスに参入 有機農民・基準・健康・環境に悪影響の恐れも

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.15

 世界最大の安売り小売企業・ウォルマートが、有機食品販売の拡大を決め、商品供給者に対してその要求に合う広範な製品を増やすように要求している。現在は通常食品よりも20%から30%高く売られている有機食品を、せいぜい10%ほど高い値段で販売するという。この動きに賛否両論の声が上がっている。12日付のニューヨーク・タイムズ紙の報道が伝えた。

 Wal-Mart Eyes Organic Foods,The New York Times,5.12
 http://www.nytimes.com/2006/05/12/business/12organic.html(要登録・一定期間無料)

 ウォルマートは、その店舗で働く労働者に劣悪な労働・雇用条件を強い、また世界中の商品調達先に恐るべき低賃金と劣悪な労働条件を強要するとして広範な批判に曝されてきた。その突然の変身の理由は何か。現在、有機食品市場[販売]は全食品市場の2.4%を占めるに過ぎないが、年に15%の成長が見込まれる。同紙は、これを見越した上で、同社の悪役としてのイメージを取り払い、都市やその他の高所得消費者へのアッピールを強めようとしているのだと言う。

 ウォルマートは、ケロッグ、クラフト、ジェネラル・ミルズ、ペプシのような供給者に広範な有機食品の供給を求めている。ケロッグとクラフトは、ウォルマートと有機ライスクリスピー・マカロニ・チーズで共同を始めた。ケロッグは、ウォルマートのような巨大な顧客がこのような製品に熱狂することは有益だと言う。ケロッグは、7月に有機シリアル(Raisin BranFrosted Mini Wheats)を導入することを計画している。ジェネラル・ミルズとペプシも、2006年末にはよく知られたブランド品の一部の有機版を導入することを計画している。

 一部の人々が消費者に一層健全で、大きな選択肢を与えるとこの動きを賞賛している。しかし、賞賛ばかりではない。

 厳格な基準と少規模有機農場を保護を推進する有機消費者協会は、ウォルマートが有機農業の背後にある原則をないがしろにし、最終的には価格を引き下げ、有機農民を締め出すことになるのを恐れている。このビジネスモデルは、有機小売店を破産させ、すべての競争者を一掃するだろう、既に需要に供給が追いつかないとき、ウォルマートの参入は、大変怪しげな有機基準と劣悪な労働条件を持つ中国のような海外からのアウトソーシングに行き着くだろうと言う。彼らは、有機農業基準が引き下げられ、また社会的・環境的に無責任なビジネスが却って助長される結果になることを恐れているわけだ。

 また、ニューヨーク大学のマリオン・ネストル栄養・食品研究・公衆衛生学教授は、これは地球には良いことだが、栄養的観点からはそうではない、消費者を一層ジャンク・フードに駆り立てる策略だと言う。肥満や生活習慣病の増加につながるジャンクフードの大量摂取への警告が強まるなか、それはジャンクフードに免罪符を与えることになりかねない。消費者は、このような策略に簡単に騙されてしまうのだろうか。