商社は大規模海外農地投資に慎重 海外農業投資促進会議公開会合

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.28[追記:7.29]

 本日(28日)午後、外務省と農林水産省の共催による「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議(海外農業投資促進会議)」の第4回会合が”公開”で開かれた。外務省、財務省、農林水産省、経済産業省、国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易振興機構(JETRO)、日本貿易保険(NEXI)からなる海外農業投資促進会議メンバーが、海外投資の実行部隊となる大手商社を招いて意見を交換した。

 参照:「食料安全保障のための海外投資促進に関する会議(海外農業投資促進会議)」公開会合の開催について(お知らせ) 外務省 09年7月23日

 初めての公開会合で明らかになったのは、実行部隊が大量の海外土地を購入やリースを通じて取得、海外直接生産に乗り出すことには、総じて、極めて慎重だということである。技術的に不慣れで、生産も天候次第の農業生産への投資はリスクは大きすぎる、企業による日本の農地の取得と同様、土地投資をめぐる政治的リスクも大きいと言う。

 それよりも、世界の食料需給の緩和に貢献する別の方策を優先すべきだという声も高い。日本が得意とする稲作分野でアジアの米増産を援助し、その米をエタノール生産に使うことで、トウモロコシや大豆の世界的需給緩和に貢献すべきといったメイ案まで飛び出した。

 海外投資支援機関や保険機関も、経験のない農業投資のリスクへの対応を探りあぐねている。大量の税金を注ぎ込む余程の政府支援が約束されないかぎり、実行部隊は動きそうにない。

 政府やマスコミが、無理やり大規模農地の取得に駆り立てることがないように望みたい。

  [追記:7月29日]筆者の「意見も踏まえ、公開の会合」が開催されたことを歓迎したい。ついては、今後も、できるかぎり同様のやり方が続けられることを期待したい。もう一つ、大規模な海外農地投資がホスト国の農業、食料、土地・水・自然資源利用、環境に多大な影響を持つことに鑑み、少なくとも一度は、これらの問題の専門家から意見も聴取する会合を開くことも望みたい(農業情報研究所・北林寿信)。