OIE:BSEコード改正案、BSEリスク評価基準から飼料規制の有効な執行を削除

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農業情報研究所(WAPIC)

05.3.30

 昨日伝えた国際獣疫事務局(OIE)のBSEコード改正案のBSEリスク・ステータス3分類案を紹介する(これが最終バージョンかどうかは自信がないが)。その意義の詳しい分析はこれからだが、最大の変更点は、

 1)スタンニングやピッシングを受けていない牛からの骨なし肉と血液・血液製品をBSEリスクのステータスと無関係に、無条件で貿易できるようにすること、

 2)BSEリスクの評価の基準から、飼料規制の有効な執行を削除すること(飼料規制が制度としてあるかどうかだけが問題)を中心とするリスク評価基準の緩和、

 3)サーベイランスの基準を二つに分け、リスクが無視できると評価された国・地域に適用される基準を相対的に緩めること(サーベイランス基準については⇒http://www.aphis.usda.gov/vs/ncie/oie/pdf_files/tahc-bse-surv-jan05.pdf)、

にあるようだ。

 第一の点を除けば、リスク国からの輸入条件自体には大きな変更はないようだ。感染牛の一切の組織は人間と動物の利用から排除せねばならないというのは科学者のコンセンサスと思うから、感染牛がすべて発見できいない現状では、骨なし肉や血液の利用の可否も、BSEが存在するかどうか、存在するとすればどれほどの数かというリスク評価と無関係には決めることはできない。この変更案は政治・経済的思惑から出たとしか考えられない。こんな案は葬り去ることを前提に、何よりも飼料規制の有効な執行の有無に重点を置いたリスク評価を徹底すべきだし、リスク・ステータス決定を大きく左右するサーベイランスの基準の強化も目指さねばならないと考える。

 なお、コード改正案について、農水省は3月30日、専門家会合を4月8日に(「OIE/BSEコード改正に関する専門家会合」の開催について」)、消費者団体、生産者団体、食肉関連事業者、流通業者、外食事業者、アドバイザー(学識経験者)、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省が参加する意見交換会を4月15日(「食品に関するリスクコミュニケーション(OIEにおけるBSEルールの改正に関する意見交換会(第2回))」の開催及び出席者の募集について」)に開くと発表した。残念ながら、専門家と特定団体以外の一般国民が議論に参加する機会はなさそうだ。せめてこれら選ばれた人たちに徹底的に議論してもらいたい。会合の結果は遅滞なく公表して欲しい。

 以下は3分類案の翻訳(一部は要約)である。赤字部分が追加部分、青字部分が削除される部分である。

 OIE:BSE code:提案された3カテゴリーのバージョン 
 (
http://www.aphis.usda.gov/vs/ncie/oie/pdf_files/tahc-bse-pro-jan05.pdf

 第1条 この章の勧告は、牛にのみBSE病原体が存在することに関連した人間と動物の健康を管理することを意図するものである。

 1)次の商品並びにこれら商品から製造される全製品及びその他の牛由来のいかなる組織も含まない製品の輸入または移送を許可するとき、獣医当局(Veterinary Administration)は、輸出国または輸出区域の牛集団のBSEリスク・ステータスと無関係に、BSEに関連した条件を要求するべきではない。

 a)乳と乳製品、

 b)精液及び国際受精卵移植学会の勧告に従って採取され・扱われた牛の生体内受精卵、

 c)獣皮及び皮革(頭部の獣皮及び皮革を除く)

 d)専ら獣皮及び皮革から調整されたゼラチンとコラーゲン(頭部の獣皮及び皮革を除く)

 e)蛋白質を含まない獣脂(重量で0.15%の非溶解不純物の最大限レベル)及びこの獣脂から作られる派生品、

 f)燐酸ダイカルジウム(蛋白質及び脂肪が検出されない)、

 g)屠畜に先立ち圧搾空気またはガスを頭蓋の穴に注入する装置によるスタンニング、またはピッシングを受けていない牛からの脱骨骨格筋肉(機械的分離肉を除く)、

 h)屠畜に先立ち圧搾空気またはガスを頭蓋の穴に注入する装置によるスタンニング、またはピッシングを受けていない牛からの血液及び血液副産物。

 2)この章に掲げられるその他の次の商品の輸入または移送を許可するとき、獣医当局は、輸出国または輸出区域の牛集団のBSEリスク・ステータスと関連するこの章に定められる条件を要求するべきである。

 a)牛、

 b)生鮮肉と肉製品、

 c)骨または頭部からの獣皮と皮革から調整されたゼラチン及びコラーゲン、

 d)上に定められた蛋白質を含まない獣脂以外の獣脂と獣脂派生品、

 e)蛋白質及び脂肪が検出されない燐酸ダイカルジウム以外の燐酸ダイカルジウム、

 診断検査の基準はTerrestrial Mannualに記述される。

 第2条 輸出国または輸出区域の牛集団のBSEリスク・ステータスは、次の基準に基づいてのみ決定することができるべきである。

 1)BSE発生のすべての潜在要因とその歴史的展望を確認する1.3節に基づく(年々見直される)リスク・アセスメントの結果:

 a)放出アセスメント

 放出アセスメントは、次のことを斟酌して、BSE病原体が土着反芻動物集団に前もって存在する伝達性海綿状脳症(TSE)から、またはTSE病原体に潜在的に汚染された次の商品を通して、TSEが牛集団に導入された可能性(likelihood)をアセスすることからなる。

@)国または区域における動物のTSE病原体の存在または不在、またもし存在するならばサーベイランスの結果に基づくその発生率、

 A)土着の反芻動物集団からの肉骨粉または獣脂かす、

 B)輸入された肉骨粉または獣脂かす、

 C)輸入された生きた牛、

 D)輸入された飼料と飼料成分、

 E)第13条に掲げられる組織を含んだ可能性があり、また牛に給餌された可能性がある人間消費用の反芻動物起原の輸入製品、

 F)牛の生体内利用のための反芻動物起原の輸入製品。

 上記に関連するサーベイランス及びその他の疫学的調査がアセスメントの実施において考慮されるべきである。

 b)暴露アセスメント

 次のことの考慮を通して、牛がBSE病原体に暴露された可能性(likelihood)をアセスすることからなる暴露アセスメントが、放出アセスメントがリスク要因を確認したならば、実施されるべきである

 @)反芻動物起原の肉骨粉または獣脂かす、またはこれらに汚染されたその他の飼料または飼料成分の牛による消費を通してのBSE病原体のリサイクルと増大、

 A)反芻動物の屠体(死亡牛からのものを含む)、副産物、屠畜廃棄物の利用、レンダリング過程のパラメーター、動物飼料製造方法、

 B)動物飼料の交差汚染の防止措置を含む反芻動物由来の肉骨粉及び獣脂かすの反芻動物給餌の有無、

 C)当時までに牛集団に対して行われたBSEサーベイランスのレベル及びサーベイランスの結果。

 2)獣医、農業者、牛の輸送・販売・屠畜にかかわる労働者に3.8.4.2条及び3.8.4.3条に定められる標的小集団においてBSEに合致する症候を呈するすべてのケースの報告を奨励する進行中の啓蒙プログラム、

 3)BSEに合致する症候を呈するすべての牛の強制通報と調査、

 4)前記のサーベイランスと監視のシステムの枠内で採取された脳及びその他の組織の承認された試験所での検査、

 5)上記の1)で認められたリスクに重点を置き、付属書3.8.4の指針を考慮に入れるBSEサーベイランスと監視のシステム。調査の数字と結果の記録は最7年間保存されるべきである。

 (上記の放出及び暴露アセスメントに言及されたサーベイランスを考慮に入れる)リスク・アセスメントが無視できないリスクを示すとき、当該国は付属書3.8.4に従ってAタイプのサーベイランスを行うべきである。

 (上記の放出及び暴露アセスメントに言及されたサーベイランスを考慮に入れる)リスク・アセスメントがリスクを無視できることを示すとき、当該国は付属書3.8.4に従ってBタイプのサーベイランスを行うべきである。

第3条 商品特定リスク軽減軽減措置なしで無視できるBSEリスク

 商品特定リスク軽減軽減措置を適用する必要性がなくして無視できるBSE伝達リスクを呈する国・区域の牛集団由来の商品は、次の条件を満たすべきである。

 1)歴史的及び既存のリスク要因を確認するために第2条の1)で述べられたリスク・アセスメントが行われ、それが、認められたいかなるすべてのリスクを管理するために下に定められる適切な一般的措置が関連期間取られたことを実証した、

 2)国が、付属書3.8.4に従っての要件を満たすBタイプのレベルのサーベイランスと監視が実施されていることを立証した、また

 3)次のa)か、b)のどちらかの条件を満たす。

 a)BSEのケースが無かったか、いかなるBSEのケースも輸入されず、また完全に廃棄処分されたことを立証した、そして、

 @)第2条の2)から5)4)までの基準が最低7年間満たされ、かつ

 A)適切なレベルの監督と監査を通して、反芻動物由来の肉骨粉か獣脂かすが最低8年間反芻動物に給餌されなかったことを立証した。

 b)最後の土着のBSEのケースが7年以上前に報告され、かつ

 @)第2条の2)から5)4)までの基準が最低7年間満たされ、かつ

 A)適切なレベルの監督と監査を通して、反芻動物由来の肉骨粉か獣脂かすの反芻動物への給餌が禁止されてきたこと、が最低8年間反芻動物に給餌されなかったことそして禁止が最低8年間有効に執行されてきたことを立証した。かつ

 B)すべてのBSEのケースが、

 −病気発症の前後2年以内に生まれた雌のケースのすべての子、

 −生後1年の間、BSEのケースと一緒に飼育され、調査がその期間、汚染された可能性のある同じ飼料を消費したことを示すすべての牛、

 −調査の結果結論が出ないなら ば、BSEのケースと同じ牛群で、その出生の12ヵ月以内に生まれたすべての牛、

も含め、もし国・区域で生きていれば、恒久的に識別され、かつその移動がコントロールされ、屠畜されるか死んだときには完全に廃棄されている。

第4条 商品特定リスク軽減軽減措置があれば無視できるBSEリスク

 追加の商品特定リスク軽減軽減措置を適用することにより無視できるBSE伝達リスクを呈する国・区域の牛集団由来の商品は、次の条件を満たすきである。

 1)歴史的及び既存のリスク要因を確認するために第2条の1)で述べられたリスク・アセスメントが行われ、それが、認められたいかなるすべてのリスクを管理するためにに定められる適切な一般的措置が関連期間取られたことを立証しなかった、

 2)国が、付属書3.8.4従っての要件を満たすAタイプのレベルのサーベイランスと監視が実施されていることを立証した、かつ

 3)次のa)か、b)のどちらかの条件を満たす。

 a)BSEのケースが無かったか、いかなるBSEのケースも輸入されず、また完全に廃棄処分されたことを立証した、第2条の2)から4)までの基準が満たされていることも立証した、かつ、適切なレベルの監督と監査を通して、反芻動物由来の肉骨粉か獣脂かすが反芻動物に給餌されなかったことを立証でき、かつ次のどちらかしかし、少なくとも次の二つの条件の一つが適用される

 @)第2条の2)から5)4)までの基準が満たされるが7年間満たされていない、または、

 A)最低8年間反芻動物への反芻動物からの肉骨粉または獣脂かすが反芻動物に給餌されなかったことがの給餌に対するコントロールが8年間実施されてきたことが立証されなかったできない。

 b)最後の土着のBSEのケースが7年以上前に報告され、第2条の2)から5)4)までの基準が満たされ、適切なレベルの監督と監査を通して、反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすの反芻動物への給餌の禁止が有効に執行されていることが反芻動物に給餌されなかったことを実証できるが、次のどちらか少なくとも次の二つの条件の一つが適用される

 @)第2条の2)から5)4)までの基準が満たされるが7年間満たされていない、または、

 A)8年間、反芻動物への反芻動物からの肉骨粉または獣脂かすの給餌の禁止が有効に執行されてこなかったに対するコントロールがあったことが実証できない。かつ、

 B)すべてのBSEのケースが、

 −病気発症の前後2年以内に生まれた雌のケースのすべての子、

 −生後1年の間、BSEのケースと一緒に飼育され、調査がその期間、汚染された可能性のある同じ飼料を消費したことを示すすべての牛、

 −調査の結果結論が出ないならば、BSEのケースと同じ牛群で、その出生の12ヵ月以内に生まれたすべての牛、

も含め、もし国・区域で生きていれば、恒久的に識別され、かつその移動がコントロールされ、屠畜されるか死んだときには完全に廃棄されている。

 または、

 c)最後の土着のBSEのケースが7年以上前に報告され、かつ

 @)第2条の2)から5)4)までの基準が最低7年間満たされ、

 A)反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすの反芻動物への給餌の禁止が最低8年間有効に執行されており、

 B)すべてのBSEのケースが、

 −病気発症の前後2年以内に生まれた雌のケースのすべての子、

 −生後1年の間、BSEのケースと一緒に飼育され、調査がその期間、汚染された可能性のある同じ飼料を消費したことを示すすべての牛、

 −調査の結果結論が出ないならば、BSEのケースと同じ牛群で、その出生の12ヵ月以内に生まれたすべての牛、

も含め、もし国・区域で生きていれば、恒久的に識別され、かつその移動がコントロールされ、屠畜されるか死んだときには完全に廃棄されている。

第5条  決定されないBSEリスク

 他の分類の要件を満たすことを実証できないならば、国・区域の牛集団は決定されないBSEリスクを呈する。

 (以下は要約)

第6条(商品特定リスク軽減措置なしで無視できるBSEリスクの国・区域からの第1条の1)に掲げられた以外のすべての牛由来商品輸入)

 輸入国獣医当局は、国または区域が第3条の条件を満たすことを証明する国際獣医証明書の提出を要求するべきである。

第7条(商品特定リスク軽減措置を講ずれば無視できるBSEリスクの国・区域からの牛の輸入)

 輸入国獣医当局は、1)輸出国・区域が第4条の条件を満たし、2)輸出向けの牛が母畜及び出生牛群に遡ることを可能にする恒久的識別システムで確認され、牛が病原体に暴露されていないこと、3)土着のBSEのケースがある国・地域の場合には、輸出される牛が反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすの反芻動物への給餌の禁止(フィードバン)が有効に執行されて以後に生まれたものであること、を証明する国際獣医証明書の提出を求めるべきである。

第8条(BSEリスクが決定されない国・区域からの牛の輸入)

 輸入国獣医当局は、1)反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かすの反芻動物への給餌が禁止され、有効に執行されてきたこと、2)すべてのBSEのケースが、永久的に識別され、かつその移動がコントロールされ、屠畜されるか死んだときには完全に廃棄されていること、3)輸出される牛が母畜及び出生牛群に遡ることを可能にする恒久的識別システムで確認され、BSEが疑われるか、確認された雌牛の子でないこと、フィードバンの日から少なくとも2年後に生まれたこと、を証明する国際獣医証明書の提出を求めるべきである。

第9条(商品特定リスク軽減措置なしで無視できるBSEリスクの国・区域からの第1条の1)に掲げられた以外の生鮮牛肉と牛肉製品の輸入)

 輸入国獣医当局は、国または区域が第3条の条件を満たすこと、及び生鮮牛肉及び牛肉製品が由来するすべての牛について生前・死後検分がなされたことを証明する国際獣医証明書の提出を求めるべきである。

第10条(商品特定リスク軽減措置を講ずれば無視できるBSEリスクの国・区域からの第1条の1)に掲げられた以外の生鮮牛肉と牛肉製品の輸入)

 輸入国獣医当局は、1)輸出国・区域が第4条の条件を満たし、2)生鮮牛肉及び牛肉製品が由来するすべての牛について生前・死後検分がなされたこと、3)これらの牛がスタンニングやピッシングを受けていないこと、4)これらの牛肉・牛肉製品が第13条に掲げる組織や、30ヵ月以上の牛の頭蓋と脊柱からの機械的分離肉を含まず、これら組織による汚染を回避する方法で完全に除去されていること、を証明する国際獣医証明書の提出を求めるべきである。

第11条(リスク不明国からの第1条の1に掲げられた以外の生鮮牛肉と牛肉製品の輸入)

 輸入国獣医当局は、1)生鮮牛肉及び牛肉製品が由来する牛がBSEが疑われるか確認された牛でなく、最低8年間肉骨粉と獣脂かすを給餌されておらず、生前・死後検分を受け、スタンニングやピッシングを受けていないこと、2)これらの牛肉・牛肉製品が骨なし肉に由来し、第13条に掲げる組織、脱骨の過程で暴露された神経・リンパ組織、頭蓋と脊柱からの機械的分離肉を含まず、これら組織による汚染を回避する方法で完全に除去されていること、を証明する国際獣医証明書の提出を求めるべきである。

第12条 反芻動物由来の肉骨粉と獣脂かす、これらを含むいかなる商品も、第4条第5条に定める国・区域起原のものは国の間で取引すべきでない。

第13条 第4条第5条の国・区域からの一定商品とこれらに汚染された商品の食料、飼料、肥料、化粧品、薬品・医療器具の調整のための取引はすべきでない。

第14条 骨または獣皮と皮革から調整され、食料、飼料、化粧品、薬品・医療器具に使われるゼラチンとコラーゲンの輸入に際して輸入国獣医当局が要求すべきこと(獣皮と皮革由来のものが規制対象から除外された以外、従来と変わらない。)。

第15条 食料、飼料、肥料、化粧品、薬品・医療器具用の獣脂と燐酸ダイカルシウムについて、輸入国獣医当局が要求すべきこと。(国・区域のリスク3分類化に伴う字句変更以外の基本的変化はない)

第16条 食料、飼料、肥料、化粧品、薬品・医療器具用の獣脂派生品について、輸入国獣医当局が要求すべきこと。国・区域のリスク3分類化に伴う字句変更以外の基本的変化はない)