農業情報研究所

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欧州委員会、有効な飼料禁止:第三国のためのガイダンス・ノート

01.10.31

 わが国では、10月4日、狂牛病拡散防止措置として、牛の飼料に動物蛋白が混入または誤用されることを防ぐために、いわゆる「肉骨粉」の流通・使用が全面停止された。しかし、農水省は、早くも一部解禁の方針を示している。全面停止の趣旨からすれば、万全の混入・誤用防止策が出来上がったときにのみ解禁するのが筋である。焼却しきれない肉骨粉が行き場を失い、積み上げられている状況のなかで、理論的には混入・誤用の恐れがないとされる一部のものの解禁でも、現実には非常な危険をはらんでいる。この危険を回避する条件はいかなるものなのか、真剣に考える必要がある。そのための一つの参考資料として、今年7月に欧州委員会が明らかにした「有効な飼料禁止:第三国のためのガイダンス・ノート」(European CommissionDirectorate D,Effective Feed Ban: Guidance note for third countries(2001.7.18)なる文書を挙げることができる。これは、EUが域外諸国の肉骨粉禁止措置の有効性を判断するためのものであるが、現在の日本が取るべき措置に示唆を与えるものと考え、ここに紹介することにしておきたい。

序論

1.一定の伝達性海綿状脳症(TSEs)の予防・コントロール・排除のためのルールを定める欧州議会及び理事会の規則(EC)999/200120017月1日から適用された。その諸条項は、カテゴリー2から5(注)までの国または地域からの牛・動物起源の生鮮肉と製品の輸入に対して、なかんずく、哺乳動物由来の蛋白による反芻動物飼育が禁止されており、この禁止が「有効である」ことを立証する国際動物健康証明書が付されることを要求している。この飼料禁止の有効性は、また諸国のBSEカテゴリー分類の重要な基準でもある。しかし、「有効な飼料禁止」の意味は、共同体法において未だ明確にされていない。

2.従って、このノートは、BSE国別分類の目的のために欧州共同体が有効な飼料禁止の証明として求めるであろう指標を説明しようとするものである。

3.現在、食料生産のために飼われ・肥育され・繁殖される農用動物への加工動物蛋白の給餌は欧州共同体全体にわたり全面停止されていることに注意せねばならない。

 

有効な飼料禁止とは何か

4.有効な飼料禁止は、哺乳動物由来の蛋白(食物残滓を含む)の反芻動物(子牛・子山羊・子羊を含む)への給餌の防止に有効であり、TSEsの発生と伝達、特にBSEリスクを通時的に回避することができる、一国が導入した一連の措置と理解することができる。次の四つの主要な指標の存在が、そのような禁止の有効性のレベルの尺度として利用できる。

信頼できる国家ルール

製造・流通・使用のチェーンの信頼できる構造

納得できるサーベイランス・モニタリング・監査のシステム

動物飼料とTSEsに関する共同体ルールの確たる知識と啓蒙

 

国家ルール

5.信頼でき、国家的で、十分に組織された飼料禁止管理フレームワークが不可欠である。これには、哺乳動物由来蛋白の反芻動物への給餌の禁止に関して共同体がもつのと同等な防衛措置を定める明確で詳細な国家ルール(制定法、ガイダンス・ノート等)の存在が含まれる。また、ルールが、飼料チェーンのすべてのレベル(輸入・生産・流通・使用を含む)で実施され、強制され、遵守されるように保証する良好な管理・コントロール上の資源の存在も含まれる。公的機関によるチェックの適切に記録された証拠は、正しい実施の必須の指標であり、その有効性は、特に遵守に関するデータを通じて検証できる。

6.しかしながら、国家ルールの信頼性の評価においては、記録された他の要因も斟酌される。これらの要因には、反芻動物家畜群の構造及び/または農業の経済的状況、及び/または輸入ゼロの国内加工産業の欠如が含まれる。

7.評価のための情報は、飼料禁止に関連しての防衛措置を提供する共同体の現在の中心的ルールに照らし、次のものをカバーする。

 給餌と飼料混入を回避するためのコントロール、人間消費に不適な物質(例えば特定危険部位、死んだ動物、死んだペット)の排除。

 飼料工場の承認と加工基準、表示、マーケッティング、動物起源成分の顕微鏡確認と評価

 

飼料製造・流通・使用チェーンの構造

8.特定の動物種用の飼料の生産と処理のための、権限ある当局により承認され、監視される専用飼料加工処理工場を基本とする信頼できる構造は、混入のリスクと禁止飼料の反芻動物への給餌の可能性を回避するために決定的に重要である。そのような専用工場がない場合には、また禁止された物質と許された物質同じ施設で加工され、処理される所では、混入の可能性の防止を保証するために、飼料チェーン(輸送・貯蔵・パッケージを含む)全体を通じてのラインと施設の完全な分離がなければならない。十全な洗浄と消毒も必要である。

9.従って、パラグラフ4に照らし、有効な飼料禁止の最も重要な指標は、BSEのリスク及びその時間を通じての伝達のリスクを直接に減らすことを可能にする慣行を含む。これらには、給餌の良好な慣行と基準、特定危険部位の除去、飼料の表示が含まれる。従って、有効な飼料禁止は、一定期間を通じて適切なコントロールと監査が行われており、いかなる反芻動物も哺乳動物由来の蛋白を与えられることが高度にありそうもないと立証するところに見出される。

10.しかし、これが完全に立証できない場合も、次のことが証明されれば、有効な飼料禁止がなされているとみなされる。

 すべての加工工場で高リスク物質(特定危険部位、死んだ動物、その他人間消費に不適な物質)が、BSE感染性を減らす温度・時間・圧力の高度な基準(50mm以下の粒子につき133℃、20分、3気圧か、それ以上)で処理されていること。

 高度なBSE感染性をもつ可能性のあるすべての組織(特定危険部位)と動物全体(死んだ動物)が飼料調整用の原料(輸入、国内起源を問わず)から排除されていること。

 現在の飼料・獣医ルールに対する無知を通して使用者が哺乳動物由来の蛋白を反芻動物に与えることを防止するために、表示、動物起源の成分の試験所による確認と評価が適切に行われていること。

11.完全で、整合的で、記録された証拠により、関係する期間を通じ、禁止飼料、または禁止蛋白に汚染された可能性のある飼料が、特に高リスクの期間にBSE高発生国から調達された場合には、飼料に使われなかったことを証明しなければならない。BSEの発生またはそのリスクが確認されたところでは、適切な期間を通じ、発生・リスク・伝達を管理するための適切な措置が取られていなければならない。そのような措置には、パラグラフ9、10に言及したものに加え、汚染飼料を通じてBSEが飼料チェーンに再び入り、また反芻動物がBSE病原体に再び曝されるのを防止するために、能動的(アクティブ)サーベイランス、モニタリング、適切な殺処分が含まれる。

 

サーベイランス・モニタリング・監査のシステム

12.不完全性と取られるべき適正な措置の認定を可能にするためには、納得できる政策手続が不可欠である。特に次のことが検証されねばならない。

 関係当局の権限と法律・規則・行政規程の遵守を確保するための、動物飼料取引・使用・生産業者からのすべてのデータへの完全な法的アクセス。

 例えば、混入、移動・購入・販売の確認、レンダリング・パラメーター等の数字を示す整合的で完全な記録。

 追跡可能性を確認し、飼料が哺乳動物由来蛋白と無縁であることを示す飼料チェーン全体を通じての飼料原料と配合飼料の品質と成分に関する各バッチのチェックと検査の記録。

 警告文(例えば「この飼料には哺乳動物組織由来の蛋白が含まれるー反芻動物用飼料として使用してはならない」)を含め、哺乳動物由来蛋白を含む飼料であることの的確で意味のある表示。

 哺乳動物起源の蛋白を飼料中に検出するための試験所の使用と適切な方法(顕微鏡または他の有効な分析方法のような国際的に認められた方法)。

 違反が発見された場合には、取られた対策の記録(例えば、他の動物種用の肉骨粉が反芻動物を飼育する農家で貯蔵・使用されている混入のために飼料を回収)。

 

動物飼料とTSEsに関する国家ルールの知識と啓蒙

13.動物飼料とTSEsに関するルールに関連して、農家、飼料製造業者その他の処理業者、食品事業者、獣医、監視団体と公的機関に対する訓練と情報普及に関する納得できる証拠。これは、良好なフィードバック・メカニズム、特定危険部位の除去・確認(着色)・移動・廃棄、飼料用原料の安全な調達、加圧熱処理等が適切に存在するための要件である

 (注)規則(EC)999/2001では、カテゴリー1=BSEフリーの国または地域、カテゴリー2=土着の牛のBSEが報告されていない暫定的にBSEフリーの国又は地域、カテゴリー3=土着の牛に少なくとも1例のBSEが報告されている暫定的にBSEフリーの国又は地域、カテゴリー4=BSE低発生国または地域、カテゴリー5=BSE高発生国または地域(同規則、ANNEX2CHAPTERC)。

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