欧州委員会、有効な飼料禁止:第三国のためのガイダンス・ノート(改訂版)

農業情報研究所(WAPIC):DOCUMENT

04.7.3

 欧州委員会が2日、2001年の「有効な飼料禁止:第三国のためのガイダンス・ノート」(*)の改訂版(**)を発表した。一定の伝達性海綿状脳症の予防・統御・根絶に関するルールを定める欧州議会及び理事会規則(EC)999/2001は、BSEが存在しないと評価された国・地域以外の国・地域からの牛や牛製品の輸入に対して、哺乳動物由来の蛋白による反芻動物飼育が禁止されており、この禁止が「有効である」ことを立証する国際動物健康証明書が付されることを要求している。このノートは、このような禁止(以下、単に「飼料禁止」と言う)が有効であることを証明する指標を第三国に対して説明しようとするものである。あくまでも欧州委員会の見解であり、欧州裁判所第一審が与えることになるだろうEU法の解釈は侵害するものではないとしている。

 *Effective Feed Ban: Guidance note for third countries

 **Effectively Enforced Feed-Ban-Guidance note,revision of April 2004

 とはいえ、わが国が、例えば米国からの牛肉の輸入再開の是非を判断するためには、この問題が重要な一つの考慮事項とならねばならないだろう。6月30日に終了した日米作業グループ会合でも、BSEの定義や検査方法、特定危険部位の定義と除去方法、適切なサーベイランスのレベルと焦点、リスク評価などと共に、飼料禁止の実施の問題も突っ込んだ対話が行われたという(USDA,Statement By Dr. Peter Fernandez Of The Animal And Plant Health Inspection Service For The U.S. BSE Technical Working Group,6.30)。欧州委員会の見解は、米国における「飼料禁止」が有効かどうかを判断する際の有力な参考指標を提供するだろう。

 それだけではない。このノートは、日本の「飼料禁止」が有効に執行されているかどうかを検証するための参考にもなる。これに照らすと、それが万全とはとても信じられなくなる。 旧版については既に紹介してあるが(欧州委員会:有効な飼料禁止:第三国のためのガイダンス・ノート,01.10.31)、以下に改訂版の方も紹介しておく。

 序論

 1.一定の伝達性海綿状脳症(TSE)の予防・統御・根絶のためのルールを定める欧州議会及び理事会の規則(EC)999/2001が2001年7月1日から適用された。その諸条項は、上掲規則の付属書]TのD.3(注1)に掲げられた国・地域以外の国・地域からの牛の輸入に対して、なかんずく、哺乳動物由来の蛋白による反芻動物飼育が禁止されており、この禁止が「有効に執行」されてきたことを立証する国際動物健康証明書が付されるようにを要求している。

 2.従って、このノートは、有効に執行される飼料禁止の証明のために求められる指標を説明しようとするものである。

 3.現在、食料生産のために飼われ・肥育され・飼育される農用動物への加工動物蛋白質の給餌は欧州共同体全体にわたり全面停止されていることに注意せねばならない(注2)。

 (注1)2004年5月時点で、アルゼンチン、オーストラリア、ボツワナ、ブラジル、チリ、エル・サルバドル、アイスランド、ナミビア、ニューカレドニア・フランス領、ニュージーランド、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、シンガポール、スワジランド、ウルグアイ、バヌアツ。

 (注2)加工動物蛋白質とは、肉骨粉、肉粉、骨粉、血粉、蹄粉、角粉、家禽内臓粉、羽毛粉、乾燥脂かす、魚粉を意味する。乳、乳製品、初乳、ゼラチン、加水分解蛋白質、燐酸ダイカルシウム、燐酸トリカルシウム、卵と卵製品、コラーゲン、血漿粉・ヘモグロビン粉などの血液製品は含まない。後者の諸製品と魚粉は、EU構成国の権限ある機関により、飼料チェーン全体(集荷、輸送、加工、包装、農場レベルでの使用)を通して交叉汚染防止のための厳格で適切な措置が実施される状況において、一定の飼料への使用が許される。

 有効に執行される飼料禁止とは何か

 4.有効な飼料禁止は、TSEに感染する可能性がある動物の蛋白質の反芻動物(子牛・子山羊・子羊を含む)への給餌の防止に有効であり、TSEの発生と伝達、特にBSEリスクを通時的に回避することができる、国により導入される一連の措置と理解することができる。TSEに感染する可能性のある動物の蛋白質は反芻動物の蛋白質及び反芻動物蛋白質と区別できないすべての蛋白質である。温度・時間・圧力の高度の基準で処理された大部分の動物蛋白質を反芻動物蛋白質と区別する有効な方法の欠如は、大部分の動物蛋白質をTSEに感染する可能性のある蛋白質と見なし、またこれらすべてを欧州共同体における農用動物の飼料に使用することを禁止する理由となる。

 次の四つの主要な指標の存在が、このような禁止の有効性のレベルの尺度として利用できる。

 −信頼できる国家の法律条項、

 −製造・流通・使用のチェーンの信頼できる構造、

 −納得できるサーベイランス・モニタリング・監査のシステム、

 −飼料によるTSE伝達のリスクに関する説得的知識と認識。

 国家の法律条項

 5.信頼でき、国家的で、十分に組織された飼料禁止管理フレームワークが決定的に重要である。これには、TSEに感染する可能性のある蛋白質を反芻動物に与えることを防止する明確で詳細なルール(制定法、ガイダンス・ノート等)の存在が含まれる。また、ルールが、飼料チェーンのすべてのレベル(輸入・生産・流通・使用を含む)で実施され、執行され、遵守されるように保証する適切な管理と監督の資源の存在も含まれる。

 6.国家ルールの信頼性の評価においては、他の要因も考慮される。これらの要因には、反芻動物家畜群の構造及び/または家畜飼育の経済的状況、及び/または輸入ゼロと結合した国内加工産業の欠如も含まれる。

 7.参考情報として、飼料禁止に関連しての防衛措置を提供する共同体の現在の中心的ルールのコピーを添付すると、これらには次のものが含まれる。

 −給餌と交叉汚染を回避するための統制、人間消費に不適な物質(例えば特定危険部位、死んだ動物、死んだペット)の排除、

 −飼料施設の承認と加工基準、

 −表示、マーケッティング、動物起源成分の顕微鏡確認と推定。

 飼料製造・流通・使用チェーンの構造

 8.特定の動物種用の飼料の生産と処理のための、権限ある当局により承認され、監督される専用飼料加工・処理工場を基本とする信頼できる構造は、交叉汚染のリスクと禁止飼料の反芻動物への給餌の可能性を回避するために決定的に重要である。そのような専用工場がない場合には、また禁止された物質と許された物質が同じ施設で加工され、処理される所では、交叉汚染の可能性の防止を保証するために、飼料チェーン(輸送・貯蔵・パッケージを含む)全体を通じてのラインと設備の完全な分離がなければならない。十全な洗浄と消毒も必要である。

 9.BSEのリスクを軽減するためには、給餌、飼料加工、特定危険部位の除去、飼料の表示の適切な慣行と基準が必要で、それが時間的に持続する必要がある。従って、有効に執行される飼料禁止は、適切な統制・監視措置が設けられ、評価される国のリスクのタイプと状況に関して、時間を通して、いかなる反芻動物にもTSEに感染する可能性のある蛋白質が与えられる(故意にか、交叉汚染を通じて)ことが高度にありそうもないことを実証するところにある。

 !10.しかし、これが完全に立証できないところでも、次のことが証明されれば、追加利益となる。

 −すべての加工工場で高リスク物質(特定危険部位、死んだ動物、その他人間消費に不適な物質)が、BSE感染性を減らす温度・時間・圧力の高度な基準(少なくとも50mm以下の粒子につき133℃、20分、3気圧)で処理されている、

 −特定危険部位や死んだ動物などのBSE感染性をもつ可能性のあるすべての組織と動物全体が飼料調整用の原料(輸入、国内起源を問わず)から排除されている、

 −現在の飼料・獣医ルールに対する無知を通して使用者がTSEに感染する可能性のある蛋白質を反芻動物に与えることを防止するために、動物種の確認や動物起源の成分の量の表示を含む表示が適切に行われた。

 12.完全で、整合的で、記録された証拠により、関係する期間を通じ、禁止飼料、または禁止蛋白に汚染された可能性のある飼料が、特に高リスクの期間にBSEE高発生国から調達された場合には、飼料に使われなかったことを証明しなければならない。

 12、BSEの発生またはそのリスクが確認されたところでは、関係する期間を通じ、発生・リスク・拡散を管理するための適切な措置が取られていなければならない。そのような措置には、上の9、10に言及したことに加え、BSEの牛が飼料チェーンに再び入ること、また汚染飼料を通じて反芻動物がBSE病原体に再び曝されることを防止するための疫学的調査、アクティブ・サーベイランス、モニタリング、適切な殺処分などが含まれる。

 サーベイランス・モニタリング・監査のシステム

 14.官署による適切なチェックの記録された証拠は適切な実施の決定的に重要な指標であり、その有効性は、特にルール遵守のデータを通して検証できる。実施を検証し、欠陥の確認と取るべき是正策を可能にするためには、、納得できる政策手続が不可欠である。特に次のことが検証可能でなければならない。

 −法律・規則・行政規程の要件の遵守を確保するための関係当局の権限と、すべての動物飼料取引・利用・生産業者からのすべてのデータへの完全な法定のアクセス。

 −例えば、交叉汚染、移動及び購入(輸入、その他の調達先)・販売(利用、その他の販売先)の照合確認、レンダリングのパラメーター等の数字を示す整合的で完全な記録。

 −追跡可能性を確認し、飼料がTSEに感染する可能性のある蛋白質と無縁であることを示す飼料チェーン全体を通じての飼料原料と配合飼料の品質と成分に関する標的を絞ったドキュメンタリィーなチェックと検査。リスクベースで代表的なコントロール・プランの例は、Commission Recommendation 2004/163/EC。

 −警告文(例えば「この飼料には哺乳動物組織由来の蛋白が含まれるー反芻動物用飼料として使用してはならない」)を含む配合飼料め適切で意味のある表示。

 −飼料中の反芻動物蛋白質を検出するための試験所と適切な方法(加圧煮沸蛋白質の場合の顕微鏡や他の有効な分析方法など、国際的に認められた方法)の利用。定期的に組織されるリング・トライアル[一定のサンプルをいくつかの分析機関に送り、その結果を基に分析機関を評価する]がコントロールを実施する職員の能力や方法を検証すべきである。

 −違反が発見された場合には、取られた対策の記録(例えば、他の動物種用の肉骨粉が反芻動物を飼育する農家で貯蔵・使用されている混入のために飼料を回収)。

 動物飼料とTSEに関する国家ルールの知識と啓蒙

 14.動物飼料によるTSE伝達防止のためのルールに関して、農家、飼料製造業者、取り扱い業者、輸送業者、輸入業者、屠畜場、切り分け工場、バッチャー、獣医に対する訓練と情報普及に関する十全に記録された証拠。このためには、良好なフィードバック・メカニズム、啓蒙運動(例示やガイドライン)、特定危険部位の除去・識別(着色)・移動・廃棄・照合確認、飼料用原料の安全な調達、加圧熱処理の基準等が存在する必要がある。