日本:廃棄物をどうするのかー肉骨粉の輸入・製造・販売を一時停止

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農業情報研究所(WAPIC)

01.10.4

 農水省は、今日から肉骨粉の輸入・製造・販売の一時停止を実施する。狂牛病防止・消費者の信頼確保の観点から、一刻も早い実施を望む声が高まっていた。これを書いている筆者も、英国から欧州大陸への狂牛病拡散の基本的経路は、反芻動物飼育には肉骨粉を禁止しながら、養豚・養鶏・養魚にはこれを禁じなかったために生じた反芻動物飼料への肉骨粉の混入であると考えていたから、この措置は歓迎する。

 しかし、この措置の実施により、従来リサイクルされてきた牛の食用にならない部分ー骨やくず肉ーが大量の「廃棄物」となる。この廃棄物の適切な処理体制が前もって確立されていなければ、その実施は重大な問題を生むことになる。国は「焼却」処分を考えているようであるが、そのような焼却能力は整っていないようである。その上、焼却処分はダイオキシンの排出に拍車をかけよう。特定危険部位を含む大量の廃棄物が適切に隔離貯蔵されねばならないが、そうした貯蔵能力も整っていないようである。

 フランスは、狂牛病危機の最中、国民の声に押され、EUに先立ち、昨年11月14日から肉骨粉全面禁止に踏み切った。そのときも、この問題にいかに対処するかが最大の難題であった。食肉処理業者や飼料製造者が直接に処理できる量は限られていた。政府は、可能ならば生産現場から余り遠くないところに、しかも公衆衛生上の条件を保証できる貯蔵所を捜さねばならなかった(Le gouvernement estime "avoir de la margr" avec le sitee retenus,Le Monde Interactif,00.12.26)。輸送や貯蔵に関する厳格な「基準書」ー気密性・消毒・建物や土地の不透過性・作業員のための防塵マスク、水質保護・・・ーが作られた。

 この措置の実施のためには、廃棄物の処理体制を、早急に、国をあげて確立しなければならない。しかし、そのような緊迫感は一向に伝わってこない。肉骨粉全面禁止を唱えた人々も、こうした問題を認識していたのでろうか。それを唱えるならば、何よりも、廃棄物処理体制の早急な確立を訴えるべきであったと考える。さもないと、不法投棄などによる取り返しのつかない環境汚染が生じる恐れがある。わが国の措置が「法的禁止」でないことを考えると、廃棄されるべきものが出回る恐れがあることも考えねばならない。

 追記(10.5):4日、農水省は肉骨粉全面一時停止措置を罰則を伴う法的禁止措置に移行させると発表した。

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