農業情報研究所


日本:厚労省、狂牛病検査を30カ月齢以上の牛すべてに拡大か

検査結果はどこまで信頼できるのか

農業情報研究所(WAPIC)

2001.09.19

 19日付けの「朝日新聞」(朝刊)によると、厚生労働省は短時間で結果の判明する新たな検査方法を導入、狂牛病検査を月齢30カ月以上の牛すべてに拡大する方針を決めたと報じている。  それ自体は望ましいことである。EUは、昨年秋、短時間で結果が判明し、大量の牛の検査を可能にする「ラピッド・テスト」と呼ばれる検査方法を導入し、検査を拡大した。それにより、欧州委員会の再三の警告にも「わが国に狂牛病はない」と反発してきたドイツなどで次々と感染が確認され、豚や鶏などを含むすべての家畜の飼料から肉骨粉を排除するなど、画期的な狂牛病感染予防策が講じられる契機となった。  しかし、これらの検査の結果はどこまで信頼できるのだろうか。少なくともEUが採択した検査方法については、専門家が検出限界を指摘している。フランス食品安全機関(AFSSA)の意見は、それらの検査は中枢神経組織内の病原体が発見可能なレベルまで成長した牛を確認できるだけであり、「陰性の結果は検査された牛が狂牛病をもたないことを意味しない」として現在の「予防原則」の堅持の必要性を強調する一方、「消費者情報はこれらの限界を知らせねばならない」と述べている。

 厚生労働省の方針は、まだ正式決定ではなく(19日に決定とのこと)、公式発表もないので、採用される検査方法がどのようなものか知る由もない。従って、今は断 定的なことは何も言えない。しかし、正式決定の際には、検査の精度に関する情報も公表して欲しい。それにより、消費者は何に気をつけ、何が安全かを正確に判断できるようになり、流言による無用な混乱を避けることができる。

  パニックを防止するためにはガラス張りの行政が不可欠であるというのは欧州の狂牛病騒動の最大の教訓の一つである。

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