農業情報研究所


英仏:欧州裁判所、フランスの英国牛肉禁輸に違法判決

農業情報研究所(WAPIC)

01.12.14

13日、欧州裁判所は、フランスのイギリス牛肉禁止措置は違法の判決を下した。

 フランスは、1996年3月20日にイギリス政府が狂牛病(BSE)と人の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の関連性を初めて認めると、即座にイギリスのすべての牛・牛肉・牛製品の輸入を禁止し、EUもこれに続いた。しかし、EUは、1999年7月23日、フランス等の反対にもかかわらず、イギリスの安全確保措置が整ったとして、イギリスがBSEの有力な感染経路とみられる肉骨粉を一層した96年8月1日以降に生まれた牛の禁輸を解除していた。しかし、フランスはその後も一方的に禁輸を続けてきた。これをEU法違反として欧州委員会が提訴し、争われてきたものである。

 フランスの主たる言い分は、EUにおいてはなお追跡可能性(トレイサビリティ)と表示のシステムが不十分であり、イギリス産牛肉が安全なものかどうか確認できないということにあった。欧州裁判所も、EUの禁輸解除の時点では、このシステムが十分に機能していなかったと認めた。実際、イギリス牛が他の国で解体・加工・調整されて、真の原産国が確認できないような方法でフランスに再輸出され得た。

 ただ、EUレベルの牛識別・追跡システムは2000年7月に始動し、フランスの主張の根拠は薄弱となっていた。最近は、96年8月1日以後生まれた牛6頭にBSEが確認されたことでも、フランスは禁輸を続ける姿勢を示していた。

 この判決により、フランスはこの間のイギリスの損失の多額の賠償を迫られる。ただし、欧州裁判所は、トレイサビリティの不備の責任が欧州委員会にあることから、3分の1はEUが賠償するものとしている。

 この判決は、フランスにとって最悪のタイミングで出された。フランスの畜産農民は、いまなおBSEの影響で苦境にあり、一層の援助を政府に要求しており、政府もこれに応える姿勢を示してきた。その上、来年は選挙も控えている。判決にどう対応するか、結論は簡単には出そうもない。

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