ドイツ:スキャンダル頻発のなかで新たな牛肉品質ラベルを導入

農業情報研究所(WAPIC)

2002.2.15

 13日、欧州委員会は、牛肉に関する新たな品質ラベルを導入するためにドイツ(ババリア)が2002年に350万ユーロの国家援助を行なうことを承認した。2003年、2004年については、年に200万ユーロの予算が承認された(Certified beef quality: Commission authorises aid for advertising a new quality label in Bavaria (Germany)  、品質ラベルの図像あり)。

 このラベルは品質の保証とコントロールのプログラムの一環をなすもので、BSE(狂牛病)危機により牛肉販売が激減したのち、消費者の信頼を取り戻すために導入されたものである。EUにおいては、EU構成国間の競争条件を均すために、一般的には国による独自の援助(「国家援助」と呼ばれる)を禁止し、これを許す場合にも一定のガイドラインを策定、それに基づいて許可している。欧州委員会は2002年1月に発効した農産物の宣伝・広告のための国家援助のガイドラインに基づき、今回のドイツの措置を承認したものである。このガイドラインは、一つのラベルに製品の品質と原産地に関する情報を示すことを許している。

 しかし、ドイツでは食品安全にかかわるスキャンダルが相次いでいる。先月半ばには有害抗生物質に汚染された家畜飼料が国中で販売され、実際に使われていたことが発覚した(Un antibiotique interdit dans du veau importé des Pays-Bas ,Yahoo!/Reuters,02.1.17)。30日には、数万の牛がババリアの不認可試験所で不適切なBSE検査を受け、販売されたことが明るみに出た(German Food Scare Over Improper Mad Cow Tests,Yahoo!/Reuters,02.1.30)。2月14日付けの"Liberation"紙によれば、ドイツは検査の軽視で際立っており、この数カ月で適正な検査を受けていない数万の牛が国内・国際市場で販売され、BSEが疑われる少なくとも1万8千の牛の二分体と四分体がフランス・スペイン・イタリア・オランダ・デンマーク・オーストリア向けに輸出され、一部は北朝鮮に送られたという(Vache folle: négligences allemandes,Liberation,02.2.14)。さらに、今月初めにはイタリアで初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD、BSEが人間に伝達したものと考えられている)と疑われるケースが報告され、その感染源はマフィアが秘密裏に食肉処理した輸入牛ではないかとされているが、2月7日、ドイツ保健相がマフィアから安価で購入された大量の牛脂を含むバターがドイツで販売されており、これがvCJDを引き起こすタンパク質を含み得ると認めたという(Germany: Imported Butter Raises Mad Cow Concerns,Yahoo!/Reuters,02.2.7)。

 こうしたなか、新たなラベルにより、消費者の信頼はどこまで取り戻せるのであろうか。2000年秋から年末にかけてのパニック以来、EU諸国の牛肉消費は次第に回復しつつあるが、ドイツは回復が最も遅れている国の一つである。

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