アイルランド・イギリス:オランダからの輸入鶏肉に牛のDNA

農業情報研究所(WAPIC)

02.5.16

 アイルランド食品安全庁(FSAI)がオランダから輸入された鶏の胸肉の中に正確に表示されていない成分が高い比率で含まれているという調査結果を発表した(Food Safety Authority finds some imported Chicken Fillets in breach of Food Labelling Laws,02.5.21)。この調査は、今年、イギリスの食品基準庁(FSA)がオランダからの輸入鶏胸肉に豚の蛋白質が含まれていることを発見、当時、より精度の高い検査方法を使っていたアイルランドに接触を求めたことで行なわれた。FSAIはオランダの同じ会社からアイルランドに輸入された胸肉の30のサンプルを分析した。その結果、ほとんどのサンプルの内容・成分の表示が不正確であることとともに、増量のために大量の水が注入されていること、17のサンプルに外国のDNAが含まれていることがわかった。そのうち7のサンプルからは牛、別の7のサンプルからは豚、3のサンプルからは牛・豚のDNAが検出された。

 胸肉に水やその他の成分を加えて加工することは、明確な表示があるかぎり違法ではない。この調査で確認された添加物である牛乳由来の蛋白質・カゼインは多くの肉や加工製品に広く使われているが、通常は明確に表示されている。ただし、配膳業や外食産業において消費者に販売する場合の表示義務はない。この調査はEUの表示規則の欠陥を露呈するとともに、規則が遵守されていないことも明かにした。FSAIはこの点の改善を要請している。

 「アイリッシュ・タイムズ」紙によると、FSAIの食品科学専門家であるウエイン・アンダーソン博士は、現在、肉屋には牛肉の原産国の標示義務が課されているが、鶏肉についても表示義務を課すべきだと言っている(Demands for 'country of origin' labels after alert on chicken,,ireland.com ,5.23)。オランダの胸肉の原産国はタイとブラジルと見られるが、この場合にもオランダで加工されればオランダで生産されたと述べることは広く認められており、これは規則の「グレイ・エアリア」となっている。

 ただ、FSAIは、不正確な表示に関連した食品安全上のリスクはないとしている。

 ところが、この調査で牛の蛋白質が発見されたことは、イギリスでは鶏肉にBSEのリスクがありうるという不安を掻き立てているようである。「ガーディアン」紙によれば((Beef find in poultry raises BSE fears,Guardian Unlimited,5.23))、オランダの鶏肉産業は鶏肉の増量のために水や牛乳蛋白・加水分解コラーゲンのような様々な添加物を使う。加水分解は、通常は食肉として不適な高齢の動物や皮・骨・靭帯のような部位から蛋白質を抽出する過程であるが、この過程でBSEに関連するプリオン蛋白は破壊されない。先のFSAIのウエイン・アンダーソン博士は、この方法で混ぜ物をされたチキンにBSEのリスクがあると確認したという。彼は牛の蛋白質の起原が説明できないならば、非常に心配があると言う。海綿状脳症諮問委員会(SEAC)の消費者代表は、6月の会合でこの問題を取り上げると言い、SEAC委員長もこれは健全な心配であり、リスクは牛の成分がどこから来たかにかかっていると言っている。FSAもアイルランドの発見についてさらに調査を行なうとしている。

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