農業情報研究所


イタリア・グループ、狂牛病に対する抗生物質の有効性を示唆する研究を発表

農業情報研究所(WAPIC)

02.8.1

 イタリアの研究グループが通常使われる抗生物質が狂牛病や脳消耗病を引き起こす異常蛋白質に対抗する有益な武器になるかもしれないという研究結果を全米科学アカデミーのProceedings of the National Academy of Sciences誌に発表した(Fabrizio Tagliavini et al,Tetracyclines affect prion infectivity,Proceedings of the National Academy of Sciences(Early Edition,July 29 2002))。

 この抗生物質はテトラサイクリン系のもので、グループは、新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD、狂牛病の人間版とされる)の患者及び狂牛病(BSE)に罹った牛から採取した組織のサンプルをこの薬剤で処理した。これらの病気に関連するとされる異常プリオン蛋白質をこの抗生物質に曝すと、酵素による消化への抵抗性が減り、薬剤の分量を増やすほどに、抵抗性も減少したという。グループは、さらに、スクレイピー(羊の海綿状脳症)のハムスターでこの薬剤をテストした。テトラサイクリンに曝した異常プリオンを注入すると、ハムスターが病気になるのは大きく遅れ、長く生きた。また、この遅れは、脳消耗病で通常発現する脳異常の遅れも伴なった。

 この発見は、テトラサイクリンが脳消耗病の人の助けになり得ることを示唆している。レポートは、テトラサイクリンの抗生物質としての働きから独立した薬理学的効能を見直すべきだと言う。また、この研究は、この薬剤が感染防止に役立ち得ることも示唆している。スクレイピーを含む高度希釈溶液にテトラサイクリンを混ぜると、この溶液に暴露されたハムスターの3分の1には病気が出なかった。この結果は、抗生剤を、汚染された製品中の異常プリオンの不活性化のために使うことができるかもしれないことを示唆すると言う。

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