多分、変異型ヤコブ病(vCJD)のフランス人が死亡、フランス7人目の犠牲者か

農業情報研究所(WAPIC)

04.7.2

 AFPの7月1日付の報道によると、狂牛病(BSE)が人間に伝達したものとされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)患者と考えられる55歳のフランス人がパリ郊外の病院で死亡した。vCJDは死後脳検査でしか確定診断できないが、もしそうと確認されれば、フランスで7人目のvCJD犠牲者となる。フランスでは今まで、20歳から37歳までの男性4人、女性2人が犠牲になっている。

 英国のvCJDによる死者(多分vCJDによる者も含む)は、6月7日現在で141人で、なおvCJD患者と見られる5人の生存者がいる。91年以来今年6月23日までにフランスで確認されたBSEの件数は923で、英国で確認された件数の0.5%ほどだが、vCJD犠牲者の数ではその10倍の5%ほどになる。

 様々な理由が考えられるが、最大の要因は発見されなかったBSEの数が非常に多いことであろう。やはりAFPの1日付の報道(L'épidémie française de vache folle aurait touché plus de 300.000 bovins,Agrisalon,7.1)によると、フランスの二人の研究者が、フランスの80年から97年までの間のBSEは30万1200にのぼるだろうという研究を発表した。BSEの第一波と見られる80年代末までは、BSEはまったく発見されなかった。90年以後、通報を待っての診断検査が始まり、第二波のBSEがとらえれるようになったが、これによって2000年6月までに発見されたBSEは、4歳から9歳までの103件にすぎなかった。研究者は、発病の平均年齢、潜伏期間、屠畜月齢などを考慮して、実際の発生数を計算した。96年からは厳格な人間の感染防止措置が取られたから、人が感染したとすれば、この期間だという。

 ただし、フランスでは、多くの牛は24ヵ月前に屠殺される。牛は生後6ヵ月から12ヵ月でBSEに感染すると見られるから、この月齢でも感染性を持つだろう。だが、平均潜伏期間は5年だから、研究者はこれらの牛からの人間の感染の可能性は低いと見る。ただ、それ以上の月齢の牛が食料としてまったく消費されなかったわけではなく、96年6月からの一定の部位(現在、特定危険部位と呼ばれる)の禁止措置が取られるまでに食料チェーンに入ったこのような月齢の牛は4万7000頭と推定されている。これに、96年7月から2000年6月の間の1500頭が追加される。フランス人は英国居住、英国からの輸入牛、フランス国産牛を通して感染したと見られるが、英国起原の感染はごく一部(5%から10%)と見る。大雑把に言えば、およそ食料チェーンに入った感染牛4.5万頭から7人がvCJDに感染したということだろうか。

 このようなデータに基づくvCJD感染リスクの大きさの評価に大した意味はないが、少なくとも今までの英国のデータだけによる評価の再考は必要になるだろう。

 参考:英国における新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者数(04.6.7現在)(04.7.2更新)
     狂牛病確認(報告)件数:フランス(03.12.30現在)(04.7.2更新)