欧州食品安全庁、生前BSE検査実地試験計画のデザインで報告書

農業情報研究所(WAPIC)

04.9.18

 欧州食品安全庁(EFSA)が17日、生体牛BSE検査の評価のための実地試験計画案のデザインに関する科学リポートを発表した。欧州委員会の旧科学運営委員会(SSC)への諮問に答える任務をEFSAが引き継いでいた。

 現在、EUでは30ヵ月以上の屠殺牛の死後検査のための5つのラピッドテストが承認されているが、いくつかの関係団体が、新たに間発した死後および生前検査のEUによる評価への参加に関心を示している。EFSAによれば、一般的に、生前検査の利用が可能になれば、特に疫学的スクリーニングに関して、BSEやTSE(伝達性海綿状脳症)の問題への対処に大きな前進が期待できる。陽性牛が発見された場合に淘汰される牛の数は大きく減るだろう。生前検査はこのために承認される可能性がある。

 他方、それは消費者保護のためにも承認される可能性がある。このリポートは消費者保護の目的での生体牛検査を評価する実地試験計画案をデザインするための計画案を提供しようとするものである。理想は当然ながら、陽性のものが陽性と出る確率(感度)が100%、すなわち陰性と出る場合がゼロであり、また陰性のものが陰性と出る確率(特異度)も100%、すなわち陽性と出る(擬陽性)確率がゼロとなることだが、承認されるためには、最低限、既に承認されている死後検査と同じ要件・基準を満たす必要がある。

 とはいえ、これを立証するためには、すべての利用可能な、また将来のサンプルが生前・死後検査の両方の方法で検査されねばならない。これは、特に生前検査の場合には不可能だ。新たな生前検査の感度が既承認死後検査に劣らないことを一定の確度で実証するサンプルのサイズが決定されねばならない。中心的パラメーターは、BSEと確認されたケースから屠殺前に採取されるすべてのサンプルが陽性を示すことだ。生前検査の感度が承認された死後検査の感度の98%(99%)を下回らないことを95%の確度で実証するためには、サンプルのサイズは、承認された死後検査の一つで陽性となった病気が後期の段階にある牛の少なくとも138(258)のサンプルが必要になる。報告は、実際上の理由からとして、生前検査の感度が既承認死後検査の感度の98.5%を下回らないことを95%の確度で保証するために、少なくとも200のサンプルが検査されるべきだと決定したと言う。

 特異度については、それが100%であることを正確に証明する方法はない。特異度は99.95%(10万のサンプル中の50が擬陽性)から99.99%(10万のサンプル中10が擬陽性)の間にあるべきだと決定された。95%の確度でこれを実証するためには、5,988から29,950のサンプルが検査されねばならない。実際上の理由から、BSEではないと確認された健康な屠殺牛とBSEを疑われる障害をもつが陰性と確認された牛からの1万のサンプルが利用されるべきと決定された。

 このような検査で、潜伏期早期の感染牛の発見が可能になるという期待があるかもしれない。しかし、報告によると、検査が感染牛を発見できる潜伏期の最も速い時期を確定する方法はない。承認された基準潜伏期検査は存在しないから、病因研究から得られる潜伏期サンプルと比較しての相対的な感度・特異度の推定だけが実行可能であることを考慮しなければならない。そのうえ、生前検査が消費者保護のために承認され、加えて潜伏期間のより早い段階での感染発見が可能であることが示されたとしても、基準検査(組織病理学検査、免疫組織化学検査、ウエスタン・ブロット、スクレーピー関連繊維)や承認された死後ラピッド・テストによるその確認は可能ではない―これらの検査が潜伏期感染牛発見のためではなく、診断により感染がわかる動物についてのみ有効とされたものであることを考慮―ことも考慮されるべきである。報告は、消費者保護の枠内で取られる措置に関しては、この状況がもたらす結果が慎重に研究されねばならないと言う。この検査が導入されたとしても、それで消費者の安全が「保証」されるわけでなないということであろう。

 さらに、これは、疫学的スクリーニングのためにの承認された検査についても同様だと言う。これら検査の一部は、後の段階では消えてしまうかもしれない分子変化または異常プリオン蛋白質を発見できるものであり、承認された死後ラピッド・テストや基準検査による確認は不可能になるからだ。ただ、特異度と感度が低くても、疫学的スクリーニングのためだけならば受け入れることはできる。これらのすべての不確実性のために、この計画案は疫学研究のための生前検査の評価は考えないと言う。

 生前検査が人間の安全確保に貢献すると確認される日は、まだ遠いようだ。