国内初のvCJD発生、英国での感染が「有力」と言うが?また献血暦は?

農業情報研究所(WAPIC)

05.2.4

 日本の厚生労働省が4日、国内における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の初の発生を確認したことを発表した(国内における変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)発生について)。患者は1989年頃に英国に1ヵ月間渡航したという「情報」がある男性で、01年12月に40歳台で発症、04年12月に死亡した。04年9月16日のCJDサーベイランス委員会で、英国サーベイランスユニットとも相談したうえで、孤発型CJDと判断したが、vCJDの可能性も否定できず、病状の経過を見る必要があるとされた。そして、2月3日、北本厚生科学審議会疾病対策部会クロイツフェルト・ヤコブ病等委員会委員長によるウエスタンブロット及び病理検査の結果、vCJDが強く疑われ、同日、厚生労働省に報告された。そして今日(4日)、CJDサーベイランス委員会及び厚生科学審議会疾病対策部会クロイツフェルト・ヤコブ病等委員会が開催され、国内における最初のvCJD症例として確定されたという。

 原因については、「輸血歴はなく、平成元年頃の海外渡航歴から見て、短期間ではあるが、英国滞在時の曝露の可能性が現時点では有力と考えられる」という。

 89年といえば、英国でのBSE発生が最も多かった時期であるが、BSEが人間に伝達することはないとする英国政府が、BSEが潜伏しているかもしれない牛を食べることからくるリスクを恐れる一部科学者・メディア・国民の声に押され、羊のスクレーピーからの類推で感染性が高いと見られた牛特定臓器(6ヵ月以上の牛の脳、脊髄、脾臓、胸腺、扁桃、腸)の食材としての利用を禁止したのは89年の11月になってからである(以後も96年までは、その厳格な実施が確保されたとはいえないし、脊髄や脳、脊髄神経節を含み得る機械的回収肉も禁止されなかった)。従って、英国で感染した可能性を疑うことはできる。ただ、たった1ヵ月の滞在でそれが「有力」とまでは言うのは言い過ぎだろう(*)。現状では、それ以外の感染源が見当たらない、今後徹底的に調査すると言うべきところではないのか。

 なお、この患者の献血暦については何も触れられていないが、6ヵ月以上の英国滞在者ではないから献血禁止の対象者ではなかったはずだ。もし献血していたとすれば、輸血、血液製剤等を通しての二次感染の恐れも出てくる。この点は緊急に調査し、できるかぎり早くはっきりさせてもらいたい。

 この確認で、世界全体のvCJD患者(vCJDの可能性が高い者も含む)は168人となった。英国:153人、うち死者148人、生存者5人(今年1月7日現在)、フランス:9人、アイルランド:2人、カナダ・米国・イタリア・日本:各1人である。アイルランドの2人のうちの1人、カナダ、米国の各1人は英国滞在経験が長く、英国で感染したとされている。

 *1ヵ月の滞在では発病にいたるほど大量の感染性物質を食べられないだろうという意味においてではない。食べきれないほどの量の脳を食べなければ発病まではいかないといった最新の研究(ランセット)にもかかわらず、最低どれだけ食べれば発病にいたるのかについては全然解っていないし、そもそもそのような決まった量が存在するのかどうかも疑わしい。1ヵ月程度の滞在で考えられる程度の感染の可能性は、ほかにもいくらでもありそうということである。初のケースが発見される前の潜在感染国産牛(今ままでのその頭数の推定は米国等潜在発生国からの牛・肉骨粉輸入がもたらしたリスクを計算していない)・輸入牛からの感染、英国以外の外国での感染(FAOも言う通り、今やBSEは存在するが発見されていないだけの国はいたるところにあるだろう。米国や英国肉骨分を大量に輸入していたタイやインドネシアなどへの渡航暦はないのか)、牛を食べること以外の様々なルートでの感染等々。