米国産牛肉輸入再開条件、月齢判別法や肉骨粉混入防止策の適否は諮問せずの報道

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.18

 読売新聞(インターネット版)の報道によると、政府が、米国産牛肉の輸入再開条件に関し、食品安全委員会に諮問する事項から、肉質による牛の月齢判定法や肉骨粉の混入防止策などが除外する見通し、諮問は5月にも行われる予定だが、諮問内容は、「特定危険部位が除去された、生後20か月以内の米国産牛肉」の危険性の判断に限定される見通し。肉質による月齢判別や、安全性を判断するデータ収集などは、安全委の頭越しに「政府間交渉で決める」(関係者)」というhttp://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050318i105.htm

 これらの問題を諮問すれば審議の長期化は避けられず、問題の早期決着を迫る米国をますます苛立たせることになることを恐れたものだろう。18日来日するライス米国務長官にこうした方針を示し、日本側の努力に理解を得たい考え」という。報道の真偽はすぐにはっきりする。

 それにしても、「特定危険部位が除去された、生後20か月以内の米国産牛肉の危険性の判断」自体も、米国のBSE発生リスク(どれくらい感染牛がいるか)の評価なしには不可能なはずだ。読売も書くように、「消費者などからは、安全委の役割である科学的な検証が果たせなくなるとの批判が出そうだ」。「出そうだ」ではない。「噴出する」のは間違いない。政府もそれは分かっているだろう。しかし、早期輸入再開の政府間合意を反故にはできない。一時的に国内政治が混乱するのは覚悟の上、決めてしまえば、いずれ時間とともに消費者の批判も沈静すると腹をくくったのだろう。今の政府にはそんな選択肢しか残されていない。小泉首相の任期も長くはないから、これは予想の範囲のことだ。

 食品安全委員会は、諮問事項でなくても独自に問題を設定して審議できる。今日の東京新聞は、プリオン専門調査会の吉川座長との一問一答を載せているが、座長は、「今後、輸入条件も諮問されるが」の問いに、「どれくらい米国に(潜在的な)BSE感染牛がいて、飼料規制などの効果はどの程度か、食肉処理、脳などの危険部位の除去は適切か、などから消費者のリスクはどの程度かを評価する」と答えている。専門家なら当然だ。これらを審議しないで何を審議するのか。何もないはずだ。

 しかし、もともと、政府には食品安全委員会の言うことを全部受け入れる義務はない。ころあいを測り、政府独断の決定をすることも可能だ。政府間の約束が動かせない以上、どのみち輸入再開の「早期決定」は決まったようなものだ。

 あとは消費者が米国産牛肉をどこまで受け入れるかだけだ。食品安全委員会の審議はこれに大きく影響するだろう。政府が受け入れるかどうかにかかわりなく、プリオン専門調査会は、「どれくらい米国に(潜在的な)BSE感染牛がいて、飼料規制などの効果はどの程度か、食肉処理、脳などの危険部位の除去は適切か、など」を徹底検証して欲しい。それは消費者の選択のための信頼できる指針を提供するだろう。