オランダで初のvCJD確認

農業情報研究所(WAPIC)

05.4.23

 オランダ保健省は22日、ユトレヒトの病院の一患者が、オランダで初めてBSEの人間版とされる変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)と診断されたと発表した。(Press release:Patient in the Netherlands diagnosed with variant Creutzfeldt-Jakob Disease,05.4/22)。APの報道によると、この患者は26歳の女性である(Dutch Woman Diagonosed With Mad Cow,AP via Yahoo! News,4.21)。オランダで初めてのケースとなる。

 このケースは、オランダでこの病気の監視をするロッテルダムの国家サーベイランス・センターにより報告された。英国・エジンバラの(v)CJDに関する欧州サーベイランス・センターが脳のエックス線と病気の経過に基づいて診断を確認した。オランダ衛生検査官は病気が他の人に移った可能性があるかどうかを決定するための調査を開始、オランダ政府はこのケースをEU当局に通報した。

 この報道発表によると、この病気は臓器移植や汚染された病院の器具により伝達する可能性があり、英国での二つのケースにより血液を通して伝達する可能性も示唆された(決定的証拠は未だないとはいえ)が、この患者は血液や臓器の提供者となったことはなく、また輸血や臓器移植を受けたこともない。従って、この患者が他人に感染させたことも、他人から感染したことも高度にありそうもないという。 

 オランダは近年、血液製品からの白血球除去(2001年9月)、1980年年から1996年の間に6ヵ月以上英国に住んだ人の供血の排除(2001年11月)、1980年1月1日以後に輸血を受けた人の供血の排除(2005年2月)など、血液による伝達のリスクを最小限にする様々な措置を導入してきた。感染源の調査は汚染牛肉の消費に焦点を当てているが、今までのところ、このケースの感染源が汚染牛肉かどうかは不明で、それがトレースできるかどうか決めるには一層の調査が必要という。

 発表は、オランダはBSEの危険性が高いすべての牛を検査することで牛肉の安全性を確保しており、さらに牛の脳や脊髄はと畜の過程で隔離され、廃棄されていると強調する。先のAPの報道によると、保健省の報道官は、この女性がオランダの外で暮らしたことはなく、牛肉輸入に関する厳しい規制が導入された1997年以前に感染したらしいと言っている。

 オランダのBSEは1997年に初めて2頭に発見された。2000年までは毎年2頭ずつの発見が報告されただけであったが、スクリーニング検査が始まった2001年には20頭に急増、さらに02年には24頭、03年には19頭が報告され、昨年は6頭に減った。97年以来のBSE確認総頭数は77頭になっている。特定危険部位(SRM)の排除は1997年からであり、EUによりその有効な実施が確認されたのは1998年である。ただし、背根神経節はまだSRMに指定されたのは01年3月のことだ。

 97年以前の輸入肉が感染源である可能性が高いとしても、いまのところ、他の可能性も否定はできないだろう。SRM排除の不徹底を考えると、その後の感染の可能性も排除はできないだろう。下の表は、英国の輸入肉検査で牛の脊髄などが発見されたSRM規制違反発見件数である。これは英国の厳しい検査で発見された氷山の一角にすぎないだろう。EUが各国にSRMの排除を義務付けたのは2000年10月だ。改善傾向は見られるものの、未だに違反事例が発見される。2002年までは、オランダ自身のと畜場の違反事例もドイツに次いで多かった。

 なお、これにより、世界のvCJD患者は、英国の155人(4月1日現在)、フランスの11人、アイルランド2人、オランダ・イタリア・米国・カナダ・日本各1人を合わせた173人となった。

英国輸入肉検査によるSRM規制違反件数

と畜場(所在国) 2002年 2003年 2004年
アイルランド

8

1

-

デンマーク

1

-

1

ドイツ

12

14

-

オランダ

8

-

1

ベルギー

5

-

-

スぺイン

7

93

6

フランス

1

3

1

イタリア

1

-

-

ポーランド

-

-

3

不明

1

-

-

出所:英国食品基準庁(FSA)