狂牛病の根源は効率優先酪農ー北海道フリージャーナリスト・滝川康治氏の新「現場レポート」

農業情報研究所(WAPIC)

05.7.25

 北海道に在住、酪農経験ももつフリージャーナリスト・滝川康治氏が北方ジャーナル誌最新号(2005年8月号)で「狂牛病対策の現在ー感染源の特定は”闇の中”に これでいいのか「王国」の現在」と題する「現場レポート」を発表している。近頃の狂牛病をめぐる論議が、検査や特定危険部位の除去など、直接的な人間の安全確保策に集中するなか、最近までのデータや情報・専門家の知見などから感染源は代用乳である疑いが濃厚と論じ、「狂牛病発生の根源には、牛たちの健康を軽視した効率優先の飼い方がある。中間のシステムをいじり回すよりも、生産構造のひずみを正していくほうが社会的なコストがかからず、環境とも調和できる」と、前著『狂牛病を追うー「酪農王国」北海道からー』(七つ森書館、02年7月)で確認した「基本的な視点」を再確認している。

 ”代用乳”の利用は、「効率優先の飼い方」の象徴である。同氏は、「地球生物会議」が編纂する”ALIVE”誌の62号(2005.5-6)で、「土から離れ、酷使される牛たち」と題し、安い牛乳の源となる穀物多給、畜産工場化する「フリーストール」、多発する「第四胃変位」、「断尾」、代用乳利用など、北海道における「飼い方」の変化とそれが生み出す諸問題を追及しているが、そのなかで、

 「母乳を飲み続けられる幸運な子牛は稀な存在になっている。酪農家には売るほど牛乳があるというのに代用乳を使うのは、外国産の脱脂粉乳や油脂類などの値段のほうが安くすむからだ。母乳を横取りして、人工ミルクをふんだんに与えて成長させ、一日も早く「牛乳生産装置」を造る・・・そんな歪んだ酪農のあり方が、狂牛病の上陸を許してしまう素地になった」

 と言う。

 「現場レポート」の詳細は著作権上の問題もあろうから紹介しないが、この雑誌は北海道以外の人々には入手が難しいと思われるから、せめてその結論部分だけでも引用することをお許し願いたい。

 「北海道の酪農はいま、大規模化と中小規模の経営との二極分化が進んでいる。わたしが暮らす道北の町でも最近、二十戸ほどの酪農家が飼料製造・供給会社を設立し、大型機械を駆使した収穫作業が盛んだ。半面、牛たちが牧場で草を食む姿がめっきり減り、「土・草・牛の循環」がおかしくなっている。

 適正規模を超えた大型酪農は、飼料や肥料、機械など地域外の関連業界に多くのカネが流出する。逆に中小規模では、本誌で紹介してきたように、放牧主体でゆとりを生み出したり、農家チーズや有機酪農、グリーツーリズムなどを取り入れることで地域経済が循環する。そのほうが消費者の農業理解にも役立つし、狂牛病に象徴される工業的な畜産のあり方を変えていくきっかけになるだろう。読者の皆さんも、この問題を通じて「畜産と食」のあり方を考えてほしい」。

 これは筆者が長年持ち続ける視点と完全に重なる。消費者にも是非取り戻してほしい視点である。

 (『北方ジャーナル』は、竃k方ジャーナル社、札幌市中央区北2条13丁目、TEL.011-252-5200、FAX.011-252-5303が発行)