米国 BSE3例目の疑い 免疫組織化学検査で確定できず 再検査へ

農業情報研究所(WAPIC)

05.7.28(最終改訂:7.29

 米国で3例目(米国生まれでは2例目)となるかもしれないBSEを疑われるケースが発生した。27日の米国農務省(USDA)の報道発表が明らかにした 。同時に行われたクリフォード獣医主任の電話会見によると、大要は次のとおりである(Technical Briefing With Dr. John Clifford, USDA Chief Veterinary Officer, Animal and Plant Health Inspection Service Update On BSE Surveillance Testing Washington, DC--July 27, 2005)。

 26日遅くに、強化されたサーベイランスプログラムのエクステンションとして承認された民間獣医が提出した牛のサンプルについて非確定の検査結果を受け取った。問題のサンプルは、この獣医が4月に遠隔地域(どこかは秘されている)を訪ねた際、お産のときに衰弱していた牛(最低12歳)から採取した。ホルマリン漬けにして保存されていたが、獣医が忘れていて、先週になって提出された 。

 脳幹部分の免疫組織化学的検査(IHC)で疑わしい結果が出たが、陽性反応は弱く、異常プリオン蛋白質の分布パターンが通常のBSEの例と異なるためにBSEと確定できず、2例目の場合と同様、英国・ウェイブリッジの国際基準試験所と協力、追加組織を用いた別の部分のIHC検査を再度行う。結果が出るの来週という。2例目の発生以後、検査結果が確定できない場合に採用されることになったウェスタンブロット検査は、このサンプルがホルマリンで固定されていたために使えない 。

 獣医がホルマリンで保存、提出が遅れたのは適正とはいえないが、採取したのは新鮮な組織を48時間以内に提出するようにルールを改める以前だったので、特に問題にしない。この牛がいた農場は分かっているが、診断が確定するまでは検疫措置も取らない 。

 IHC検査しかしていなかったときにホルマリン保存をしたことや、忘れて提出しなかったことは責められないかもしれない。しかし、擬陽性が出やすいエライザ法ではなく、IHC検査で異常プリオン蛋白質を検出しながら、分布のパターンが違うからと診断を確定しないのはまったく不可解だ(注)。素人だからそんなことが言えると言われるかもしれないが、普通の感覚なら、まずBSEと確定、必要な検疫措置(最低限、当該農場の家畜の移動禁止)を取ったうえで、パターンの違いなどあとから研究すべきことではなかろうか。検査体制や発生時の対応の相変わらずのズサンさが露呈している ように見える。

 この発表を受け、別の妄想も脳裏をよぎった。

 2例目のときにも典型的BSEではないという話があった。米国には、”「動物を観察しているかぎりではすぐにはわからず、病気がかなり進行した状態になってようやく症状に気がつく」、ということは、牛が死んでしまうまで、感染していても全然きづかれないことが多い”といった類の英国と異なる型のBSEが広まっているのかもしれない(→リチャード・ローズ『死の病原体 プリオン』草思社、1998年、256頁)。2例目に続き、今回のケースも12歳以上という高齢でありながら陽性反応が弱かったというのも、こんな妄想を膨らませる材料になる。この場合、ほとんどが20ヵ月未満で食肉にされる肉用牛では、感染牛はいても発見される機会も著しく減るかもしれない。

 (注)BSEと確定しない理由を質した”The Des Moines Register”の記者に対し、クリフォード博士は次のように答えている。

 「基本的には、IHC検査は脳幹の位置の観察と並び、異常プリオン蛋白質を確認するための着色技術を使う。このケースでは、若干の(some)着色があったが、着色はBSEのケースで典型的に見られるものと合致しなかった。それはサンプル内に見られる通常の分布を持たなかった。だから、基本的には、これが追加検査を必要とする理由であり、またそれをウェイブリッジにも送る理由だ(Basically the IHC test, besides looking at location of the brain stem you're also doing a staining technique to identify abnormal prion proteins. In this case they had some staining, but the staining did not match up with what they would typically see in a BSE case. It didn't have the normal distribution it would see within the samples. So basically that's why the request for doing additional testing, and that's why we're sending it to Weybridge as wel)」。