厚労省 自然発生CJDに隠れた狂牛病人間版発見のための解剖費用を補助

農業情報研究所(WAPIC)

06.1.30

 マスコミ報道によると、日本厚生労働省が自然発生的とされる孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)と診断された患者の中に含まれ得る変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)ー狂牛病(BSE)が人間に伝達したとされるーの確定診断に不可欠な解剖経費を補助するすることを決めた。国と都道府県が4月から、一件当たり25万円を補助するという。

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060128-00000030-kyodo-soci

 日本では1999年以来、490人がsCJDで死んだとされており、vCJDによる死者は1人が確認されているにすぎない。しかし、これらの病気の確定診断には解剖による脳の病変の精査が不可欠とされる。ところが、sCJD死者の解剖率は18%にすぎず、vCJDが見逃されている可能性を排除できない。実際、昨年初めて確認された日本のvCJD患者も、最初はsCJDと診断されていた。ウェスタンブロット及び病理検査の結果、漸くvCJDと確定診断されたものだ(日本人vCJD患者、英国で感染が「有力」の結論 何故「不明」と言わないのか,05.3.8)。

 厚生労働省は、解剖率が70%以上という多くのヨーロッパ諸国に比べての日本の解剖率の低さは、解剖のために必要な財政負担のためと考えているようだ。解剖用遺体の解剖施設への運搬、感染防止のために必要な器材の購入、検死官に対する支払などの費用を補助するという。解剖率が低いのは必ずしもこれらの費用のためだけではなかろうが、一定の前進ではあろう。

 日本でのvCJD感染リスクはゼロに近いほど低いとされてきた。唯一のvCJD確認患者も、1990年前半の24日間程度の英国滞在暦から、英国で感染したというのが公式見解となっている。しかし、日本にも2001年の最初の発見以前からBSEが存在した可能性は排除できない上に、人間の感染を引き起こすとされる特定危険部位(SRM)の利用規制はなかった(規発生国の牛由来のものでない限り)。日本での感染のリスクがゼロに近いと言えるだろうか。

 現在でもBSEは根絶されたとは言えず、脳や脊髄による食肉汚染を引き起こす恐れがあるピッシングや背割りの慣行は続いているから(1月19日の食品安全委員会プリオン専門調査会への厚生労働省提出資料→http://www.fsc.go.jp/senmon/prion/p-dai35/prion35-siryou3-1.pdfhttp://www.fsc.go.jp/senmon/prion/p-dai35/prion35-siryou3-2.pdf)、国産感染牛からの今後のvCJD感染リスクも排除はできない。輸入を再停止したとはいえ、いずれ再開されるであろう米国産牛肉からくるリスクも消えるとは限らない。このようなリスクの正確な評価のためにも、vCJDの正確な診断のための手段の充実は不可欠だ。