国内27頭目の狂牛病確認 不自然さを増す97-99年生まれの少なさ

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.20

 19日、今年6頭目、全体で27頭目となる国産の狂牛病(BSE)のケースが確認された。農水省によると、このケースは5月17日に北海道で実施したBSE農場サーベイランスのエライザ検査で陽性となった乳牛1頭で、(独)農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所で確定検査を実施、ウエスタンブロット法で陽性となった。

 牛海綿状脳症(BSE)確定診断の結果について(27例目),06.5.19
 http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20060519press_6.html

 この牛はまたも2000年(8月20日)生まれで、飼養地も北海道(中川郡豊頃町)だった。なお、出生地については、13日に確認された26例目と同様、まだ発表がない。生後月齢は68ヵ月、畜種はホルスタイ(雌)という。マスコミ報道によると、この牛は歩行困難などの異常はなかったが、乳房炎にかかって16日に処分され、検査に回された。

 豊頃の牛がBSE感染 国内27頭目 北海道新聞 06.5.20
 http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060520&j=0044&k=200605209384

 これで2000年生まれの感染確認牛は9頭となった。出生年別の患畜数分布は次のようになる。 

1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
頭数 1 0 0 1 12 0 0 2 9 1 1 27

       注:2001年・2002年生まれのケースは肉骨粉飼料全面禁止以後の生まれ。

 前にも指摘したが、2000年生まれのケースが増えれば増えるほど、1997-99年生まれのケースがほとんどないのが不自然に見えて来る。2001年以後生まれのケースが少ないのは、未だ検査で発見できるまでに病気が進展していないだけかもしれないが、97-99年生まれのケースが余りに少ないのは何故か、謎は深まるばかりだ。

 96年の飼料規制(指導)が有効 に働き、95-96年生まれのケースの感染源が消えたのだろうか。これは考えにくいが、仮にそうであるとすれば、2000年になって、95-96年生まれのケースの感染源(一般には肉骨粉とされている)とは異なる新たな感染源が突然現れたとしか考えられない。この場合には、この新たな感染源は何なのか、それが解明されなければ現在の飼料規制の有効性さえ疑われる。

 あるいは、この間に生まれた怪しげな牛が検査を受けることなく闇に処分されてしまったこと が考えられる。この場合には、同一の感染源(肉骨粉には限られないだろう)による感染が続いていたが、発見されなかっただけということになる。この場合にも、未だに不確実な感染源の調査に注力せねばならない。しかし、別の問題も起きる。

 この場合には、この間に生まれた牛の感染率が不明になってしまう。ということは、摘発されないままに食物連鎖に入ってしまった感染牛の数も推定不能になるということだ。95-96年生まれの牛のみを考慮、摘発されないままに(2001年3月までに)食物連鎖に入った感染牛の数を35頭として、日本のvCJD患者発生数を最大0.9人と推定したプリオン専門調査会の「中間とりまとめ」の正当性にも疑問符がつく。

 ますますはっきりしてきた出生年別の発生数の不自然さ(不連続性)は、感染源究明の面でも、リスク評価の側面でも、一層の見直しを要請する。

 なお、これまでに狂牛病が確認されたケースの一覧を下に掲げておく。 

最終確認年月日

確認例の出生・飼育県

出生年月

月齢

畜種

備考

01.09.21

北海道常呂郡・千葉

96.03

66 ホルスタイン・雌

01.11.21

北海道宗谷郡猿払村

96.04

67 ホルスタイン・雌

01.12.02

群馬

96.08

68 ホルスタイン・雌

02.05.12

北海道白糠郡音別町

96.03

71 ホルスタイン・雌

02.08.23

神奈川

95.12

80 ホルスタイン・雌

03.01.20

北海道川上郡・和歌山

96.02

81 ホルスタイン・雌

03.01.23

北海道網走市

96.03

79 ホルスタイン・雌

03.10.06

栃木・福島

01.11

23 去勢雄ホルスタイン 非定型BSE

03.11.04

兵庫・広島

02.02

21 去勢雄ホルスタイン
10

04.02.22

神奈川

96.03

95 ホルスタイン・雌
11

04.03.09

北海道川上郡標茶町

96.04

95 ホルスタイン・雌 死亡牛
12

04.06.13

熊本

99.03

62 ホルスタイン・雌
13

04.09.23

奈良

96.02

103 ホルスタイン・雌
14

04.10.14

北海道河東郡鹿追町

00.10

48 ホルスタイン・雌 死亡牛
15 05.02.26 北海道中川郡本別町 96.08 102 ホルスタイン・雌 死亡牛
16 05.03.27 北海道天塩郡天塩町 96.03 108 ホルスタイン・雌
17 05.04.08 北海道河東郡音更町 00.09 54 ホルスタイン・雌 死亡牛
18 05.05.12 北海道砂川市 99.08 68 ホルスタイン・雌
19 05.06.02 北海道野付郡別海町 96.05 109 ホルスタイン・雌
20 05.06.06 北海道河東郡鹿追町 00.08 57 ホルスタイン・雌
21 05.12.10 北海道千歳市 00.02 59 ホルスタイン・雌 死亡牛
22 06.01.23 北海道野付郡別海町 00.09 64 ホルスタイン・雌 死亡牛
23 06.03.15 北海道中川郡中川町 00.07 68 ホルスタイン・雌
24 06.03.17 長崎県壱岐市 92.02 15歳 黒毛和種肉用繁殖  
25 06.04.19 北海道枝幸郡枝幸町・岡山 00.04 71 ホルスタイン・雌
26 06.05.13 北海道瀬棚郡今金町(生地不明) 00.08 68 ホルスタイン・雌 死亡牛
27 06.5.19 北海道中川郡豊頃町(生地不明) 00.08 68 ホルスタイン・雌 死亡牛