非定型BSEは高齢牛に感染する自然発生的BSEかーフランス研究者

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.1

   フランスの科学者の研究によると、過去2年間に米国で発見された二つの狂牛病(BSE)のケースは、大部分はヨーロッパで確認され始めたばかりの稀なBSE株により発生したということである。

 過去20年のBSE研究の前進を論議するための先週末のロンドンでの国際会合に研究成果を提出したフランスとイタリアの科学者が、発見が難しく、主に高齢牛に感染する二つの稀なBSE株について報告した。フランス食品安全機関のThierry Baron氏が提出したデータによると、昨年6月にBSE陽性となったテキサスの12歳の牛と、昨年3月にBSE陽性となったアラバマの10歳[ほどとされている]の牛は、フランス、スウェーデン、ポーランドの少数のBSEのケースと同一の検査パターンを示した。

 科学者たちは、今やこれらの”非定型”のBSEのケースを発見しつつあり、BSEを惹き起こす異常プリオン蛋白質に変化が起きたのかどうか、あるいは牛が高齢牛に感染する”自然発生的”(孤発的)BSEに感受性をもつのかどうか、疑い始めているという。

 英国獣医学研究所の伝達性海綿状脳症部長のDanny Matthewsは、非定型のBSEのケースに関する最近の研究は、高齢牛が自然発生的に病気になり得るのかどうか、あるいは以前は知られていなかったBSEのいくつかの株があるのかどうかをめぐる問題を提起している、科学者は”BSEの息子”のような新たな何かに直面しているのかも知れないと言う。

 Baron氏は、米国のケースとヨーロッパの非定型のケースにおける検査のパターンは合致しているが、それらの関連性は分かっていないと語る。フランス食品安全機関は、テキサスのケースを研究し、その結果を典型的ケースと合致しなかったフランスで発見されたケースと比較するために、米国に研究者を派遣するという。

 Atypical BSE Strain May Signal a Sporadic BSE Affecting Older Cattle,Farm Page,5.31

 これは、科学者にとっては重要なことかもしれない。しかし、一般消費者には別の気がかりが生じる。米国が米国のBSEは汚染飼料から発生したものではなく、自然発生的なものに限られると言い出しかねないからだ。それは、米国のBSE汚染度は非常に低いという従来からの言い分を補強することになる。

 しかし、米国には定型的ケースを発見できるようなサーベインス体制があるのかどうかという疑問は依然として解消されていない。検査する牛の収集方法は不透明だし、検査した牛の月齢や種類(肉用牛、乳用牛の別)の構成も不明のままだ。定型BSEが発見されないのは、これまでのケースのほとんどを占める廃用が迫った搾乳牛を検査していない結果にすぎないかもしれない。

 米国産牛肉・内臓の輸入再開が迫った今、消費者にとってはこのような疑問に答えてもらうほうがはるかに重要だ。