ほぼ全ての外食・食品大手 輸入再開でも米国産牛製品導入の予定なしー週刊誌調査

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.7

 週刊誌・”SPA!”が、米国産牛肉輸入再開が迫っており、消費者はプリオン専門調査会の吉川泰弘座長の「米国産牛が不安な人は買わなければいい」という”助言”に従い自衛するしかないが、「原産地表示がなされている精肉であればいいが、原産地表示が義務付けられていない外食産業、さらには牛脂や牛エキスといった牛由来製品を利用した加工肉や加工食品となれば話は別だ」と、大手外食産業11社と食品加工企業10社及びJAL、ANA、日本レストランエンタプライズ(JR)の輸入再開後の対応に関する独自調査結果を報告している。

 「[牛由来加工食品]の安全性を緊急チェック」 SPA! 06年6月13日号 20−23頁

 この調査は、それぞれの企業に対し、「輸入再開後の米国産牛導入の予定」と「輸入再開後の米国産牛由来製品導入の予定」を聞いたものだ。使用を明言したのは吉野家のみ、牛脂や牛エキスなどへの依存度が高い加工食品、サプリメントに関しては、ほとんどの企業が、ヨーロッパで狂牛病騒動が起きた2000年頃から、非発生国の牛や牛以外からの素材に切り替えたと答える。この調査結果は、消費者の選択の目安を提供するだろう。

 しかし、記事は、それでも必ずしも不安がないわけではないと専門家に聞いてみたという。「農業情報研究所の北林寿信氏」(筆者)が示した数字によると、大手メーカーが既に使用していなかったいという輸入停止前の2003年、米国産牛脂は1万8500トン、肉エキス(牛とは限らない)は400トン輸入されている。この量がどこかで使用されているはずだ。これら企業の回答だけでは安心できない。

 生物学者・福岡伸一氏は、特定危険部位さえ取れば安全という考え方は間違っている、他の部位も低濃度で感染している可能性はあり、それらが加工段階で濃縮されている危険性は非常に高いと言う。

 筆者は、それとともに、恐らくは大量に輸入されることになる舌、腸、肝臓などからくるリスクも恐れている。舌に感染性はないとしても、扁桃が取りきれていない恐れがあり、焼いてしまえば原産地表示義務はない。腸はEUではれっきとした特定危険部位で(OIE、腸全体をBSE特定危険部位に 問われるわが国の対応,04.6.21)、感染早期ほどリスクが高いが、もつ煮などに加工されると、やはり原産地表示義務はない。肝臓についても、炎症のあるものには異常プリオン蛋白質が蓄積している恐れがあり(炎症で特定危険部位以外臓器に異常プリオンが蓄積ーBSE対策見直しを迫る新研究,05.1.21)、無理な育てられ方をした米国産牛には炎症をもつものが多いだろうが、焼いて出される焼き鳥にはやはり原産地表示義務がない。

 これでは、輸入が再開されれば、舌も、焼き鳥も、もつ煮も、安心して食べられない。安心して食べるためには、[米国に感染牛がいないことが確認されないかぎり]輸入停止を続けてもらうほかない。