米飼料企業 反芻動物蛋白質入り牛用飼料をリコール 米国産牛肉輸入再開は再考せよ

 農業情報研究所(WAPIC)

06.6.22

 6月20日から21日まで、2日間にわたった日米局長級テレビ会合で、日本の米国産牛肉輸入再開が決まった。日本政府は6月24日から米国に食肉処理施設査察団を派遣、対日輸出プログラム、とりわけ特定部位除去(SRM)のルールが順守されているかどうか調べ、さらに農場や飼料工場における生産記録の受け渡し、飼料給与の実態等を確認する。それで問題が発見されなければ、7月下旬にも通関手続きを始めることになろうという。

 既に何度も述べたことだが、このような査察で輸出プログラムが順守されていると保証することはできない(米国産牛肉輸入再開 全輸入品のSRM付着検査が不可欠,06.5.20)。大部分の消費者はSRMが確実に除去されるなどと信じていない。消費者を安心させるために、日本側は水際検査を拡充、当面は全箱を開いてSRM混入の有無を調べるつもりらしい。しかし、ちらと見るだけの大急ぎの目視検査で脊髄の付着が発見されるはずもない。

 その上、入ってくるのは牛肉だけではない。舌や小腸などの内臓も入ってくる。舌には扁桃(SRMの一つ)が付着している恐れがある。小腸は、感染していれば、それ自体危険な部位だ。しかも、感染初期ほど危険度は高い(OIE、腸全体をBSE特定危険部位に 問われるわが国の対応,04.6.21)。食肉処理の初期段階で取り除かれた大量の小腸を、どのようにして後に肉質で20ヵ月以下と判定された牛の小腸と同定するのかもまったく分かっていないから、20ヵ月以上の牛の小腸が入ってくる可能性は否定できない。しかし、20ヵ月以下の感染牛の小腸だったとしても、却って危険度は高いのだ。

 要するに感染牛の確実な排除こそが安心の基本条件なのだ。多くの狂牛病(BSE)感染牛は、感染動物の組織を食べさせられることで感染するという通説に従えば、哺乳動物蛋白質の牛への給与を禁じる飼料規制(フィードバン)が有効に実施されていることが最も基本的な安心条件だ。だからこそ、査察団も農場や飼料工場の調査で飼料給与の実態等を確認するのだろう。

 しかし、そんな調査ももはや無用なようだ。米国自身が明白なフィードバン違反事例を発見してしまったからだ。

 16日、反芻動物蛋白質に汚染された乳牛用飼料も含む三種の家畜飼料を製造したH.J. Baker & Bro社が、食品医薬局(FDA)と協力、これら飼料のリコールを始めたと発表した。

 FDA Recall-Firm Press Release:HJ Baker and Bro., Inc. Announces National Recall of Three Animal Feed Products Containing Prohibited Ingredients,06.6.16
  http://www.fda.gov/oc/po/firmrecalls/hjbaker06_06.html

  これら飼料は、アラバマ州アルバートヴィルの同社工場で、2005年8月から2006年6月までに製造されたもので、ジョージア、ケンタッキー、ミシガン、フロリダ、アラバマ、テネシー、ミシシッピ、カリフォルニア、ルイジアナの飼料製造業者と酪農農場に売られたという。FDAは、これら製品を受け入れた者は直ちに使用をやめよと言う。

 FDAが言うように、これが故意の違反ではないとしても、これだけ広範な地域に、しかも1年近くもこんな飼料がばら撒かれていたとすれば、既に多くの牛の口に入っている のは間違いないだろう。査察団の実態調査報告は、この発表で代用できるだろう。独自調査がフィードバンは確実に守られていたなどと報告すれば、発表された事実を完全に無視することになる。そうすることで、7月下旬の通関手続を始めるのだろうか。

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 Japan to end BSE-based ban on US beef again,Centre For Infectious Disease Research and Policy(CIDRAP),6.21