米国 ハーバードの狂牛病リスク評価でダウナーカウ禁止の最終ルールが混迷?

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.27

  ハーバードリスク分析センターが、米国のダウナーカウ(狂牛病=BSEが高度に疑われる起立歩行が困難な牛)のと畜禁止が人間の狂牛病への暴露を3%減らすものの、感染牛の平均的数には”ほとんど影響”しないと分析していることが分かった。この分析結果は2005年10月にUSDAに知らされたが、未だに公表されていないという。

 米国農務省(USDA)は、2003年12月の米国初の狂牛病発見を受け、ダウナーカウを人間の食用にと畜することを禁止した。しかし、これは暫定措置にすぎず、最終的ルールの草案のコピーがこの数ヵ月、USDA内部で回覧されている。

 US Ban On Downer Cattle Protects Humans From BSE-Study,CattleNetwork.com,7.25

 別の情報源によると、この分析は、食品医薬局(FDA)で考慮中の飼料規制の二つの変更ー牛の血液の禁止と高リスク物質を含む飼料とそれ以外の飼料を作るために同一の施設を使うことの禁止ーについても評価、どちらも狂牛病拡散への大きな影響はないとしているという。

 U.S. safeguards vastly cut BSE risk to people - study,TheStar.com.my,7.26

 ジョハンズ農務長官は2005年3月、多くのダウナーカウは怪我でそうなったのであり、こういう牛に病気のリスクはないとして、ダウナーカウと畜全面禁止のルールの変更を示唆している。 禁止前、年間15万頭のダウナーカウがと畜されていたと言われ、牛肉産業界はこの禁止に強く抵抗してきた。

  USDAは、明らかに一部ダウナーカウのと畜を許すルール変更を志向しているが、なお最終ルールの決定に至っていない。恐らく、人間のリスクに多少の影響があるとするハーバードの評価で議論が紛糾しているのだろう。米国のこれまでの狂牛病対策は、基本的にはこのセンターのリスク分析に依拠してきた。

 他方、考えられている飼料規制の強化は実現しない可能性が高そうだ。