米国産牛肉に輸入牛の肉が含まれると知らなかった プリオン専門調査会の怠慢

農業情報研究所(WAPIC)

06.8.11

 知り合いから得た情報によると、10日に開かれた食品安全委員会プリオン調査会の会合で、米国産牛肉の輸出認証(EV)プログラムに定める「米国産」とは、「米国生まれ」という意味ではなく、「米国でと畜処理された」という意味であり、カナダ、メキシコ、清浄な第三国からの輸入牛も含まれることが明らかになり、紛糾したそうである。

 佐多専門委員から疑問が出され、吉川座長も「そうしたことは、リスク評価では想定していなかった」と述べた。米国産の定義を明らかにした農水省は、「メキシコも、清浄な第三国も、日本でも輸入を認めており、問題はない」と説明した。食品安全委の事務局員も「リスク評価の際、侵入リスクを評価したのだから、問題ないのではないか」と口をはさんだが、座長も佐多委員も了承せず、改めて報告を受けることで、調査会は終わったという。

 そして、終了後のにわか記者会見で、吉川座長は「EVプログラムにそんな項目があった記憶はない。肉質による月齢の判別は、米国の牧場での実績に基づいて正しいと判断したものだから、メキシコ産もあるということなら、メキシコの牧場での実績で検証しないと、科学的とはいえない」という趣旨のことを言っていたという。

 もしこの通りなら座長の怠慢だ。EVプログラムには、カナダ、メキシコ、その他の第三国(BSE清浄国)から「合法的に」輸入された牛もプログラムに含まれるとちゃんと書かれている。それによると、20ヵ月以下の牛の肉で、月齢判定が可能なこと、生育暦がトレースできることなどが条件だ。メキシコについては、直接と殺のために輸入された牛でないという特別な条件がついている。

 http://www.ams.usda.gov/lsg/arc/UseImportedCattle.pdf(USDA:AMS,05.12.12)
 http://www.maff-aqs.go.jp/topix/h17.12.12usa.pdf(日本農水省、05.12.12)

  EVプログラムの完全遵守を前提にリスク評価を行ったはずのプリオン専門調査会が、その中身を今まで知らなかったというのでは話にならない。 とっくの昔に分かっていなければならないのに、それを棚に上げて文句を言うのは責任感を欠いているとしか言いようがない。職責を果たさなかった責任を取って、即刻辞任すべきだ。