EFSA 地理的BSEリスク(GBR)評価の新たな方法を提案 わが国も精査が必要

農業情報研究所(WAPIC)

06.11.25

  EUの食品安全機関(EFSA)が11日、地理的BSEリスク評価(GBR)の方法の改訂案を来年1月14日までの公衆協議に付した。EFSAは、2003年に科学運営委員会(SSC)の仕事を受け継ぎ、今までに19ヵ国のGBRを完了したが、BSEに関する新たな科学的知見と最新のサーベイランスデータに基づくBSE発生動向を考慮して、評価方法を改めるという。

 Geographical BSE Risk: EFSA consults on revision of assessment methodology,11.21
  http://www.efsa.europa.eu/en/press_room/press_release/pr_gbr.html

  Public consultation on a draft opinion of the Scientific Panel on Biological Hazards on the revision of the Geographical BSE risk assessment (GBR) methodology,11.21
  http://www.efsa.europa.eu/en/science/biohaz/biohaz_consultations/gbr_methodology.html

 評価方法変更は、特に次のことを考慮に入れると言う。

 ・BSEリスクの予想される時間的変化

 ・BSEリスク管理・軽減のために各国が取った措置

 ・すべてのEU諸国における2001年以来の牛のBSEサーベイランスに関する現在利用可能なデータ

 ・BSE発生率は低いが大量の牛がいる国のリスクの過大に評価することがないようにする必要性

 ・国際獣疫事務局(OIE)のガイドラインとの調和。

 SSCが開発した評価方法との違いは多岐にわたり、ここでは詳細はとても紹介しきれないが、新たな評価は、SSCの評価が基本的には”定性”評価であったのに対し、可能な限り”定量”評価を行うという(これはあくまでも牛のBSEリスクにかかわるもので、日本の食品安全委員会が目指すような無謀な人間のリスクの定量評価ではない)。

 BSEの侵入リスク(外部からの挑戦)の評価に関しては、SSCの方法では考慮されなかった牛集団のサイズや構造を重視する。輸出国のリスクが大きくなく、安定している場合、この国からの感染牛や汚染肉骨粉・獣脂かす(一括してMBM)の輸入から牛リスクが大きくなるまでの期間をSSCのように一律に5年とするのではなく、挑戦を受ける牛集団のサイズが非常に大きい輸入国についてはさらに5年延長する。

 侵入リスクの評価は明確に定められた3つのステップを踏む。第一のステップは、BSEリスク国からの生きた牛とMBMの輸入データの取得で、この場合、リスク未評価の国からの輸入はBSEリスク国からの輸入と同じリスクが生じるものと見做す。第二のステップは輸入牛・MBMが飼料チェーンに入ったかどうかの決定で、この決定のための基準を明確にする。第三のステップは輸入されたものの感染性の推定で、リスク国からの牛の輸入頭数だけでなく、生きた牛や動物製品へのBSE病原体の拡散を防止するために輸出国が取った措置も考慮する。侵入リスクの大きさの目盛り(w、w=1は1リスクユニット)を導入、その値は輸出国におけるサーベイランスその他の適切な方法を用いて推定する。輸入国のリスクの大きさは、こうして得られるw=0(低リスク)からw=10,000(非常な高リスク)までの輸入牛・MBMのリスクを加重して計算する。

 国内におけるBSE拡散のリスク(安定性)の評価については、特定危険部位(SRM)除去、死亡牛、給餌に関して、感染牛における感染性分布に関する最新のデータや、0.1g、さらに0.01gの感染した脳でさえ牛の経口感染につながるという最新の知見を使って、半定量的アプローチをする。SSCは定性的アプローチしか使ってこなかった。

 また、SRM除去、レンダリング、給餌の三つの主要安定要因を考慮、BSE感染の基礎的再生産(増幅)率も評価する。SRM除去がない場合には増幅率因数は1、OIEまたはEUのSRMリストのコントロール措置と死亡牛排除などが完全遵守されている場合には0.01となる。レンダリングについてのこの値は、大気圧でのレンダリングでは0.1、133℃-20分-3気圧が遵守されているか、レンダリングがない場合には0.001とし、給餌については86年以前の英国のMBMが牛に与えられている場合の0.2から最適の飼料規制が行われている場合の0.001までとする。これらの数値を乗じて、コントロール措置の全体的影響を計算する。

 ここではこれ以上の詳細は述べられないが、いくつかの国のGBR評価を考えているわが国食品安全委員会は、この新提案を精読する必要があるだろう。特に米国を念頭においていると思われる大量の牛を持つ国のリスクを過大評価しないための評価方法変更は気がかりである。また、英国以外のすべての国ついては、最初の感染源として汚染飼料と感染動物だけを考慮し、垂直感染、他の伝達性海綿状脳症(スクレイピー、鹿慢性消耗病、ミンク脳症、猫海綿状脳症など)は考慮しないとしていることも、本当にそれでよいのかと気になる。