米国FDA 人間由来血漿製剤によるvCJD感染リスクを評価 専門家の意見を求める

農業情報研究所(WAPIC)

06.11.28

  米国食品医薬局(FDA)が血友病治療に使われる米国で許可された人間血漿由来第[因子製剤(pdF[)の利用に関連してあり得る変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD、BSEの人間版とされる)のリスク評価案を発表した。このリスク分析とコミュニケーシヨンの方法について、12月15日の外部専門家委員会で意見を求めるという。

 http://www.fda.gov/OHRMS/DOCKETS/ac/06/briefing/2006-4271b1-index.htm

 FDAがこのようなリスク評価を行った背景には、2003年以来、英国で輸血によりvCJDに感染したと見られる3つのケースが発見されたことがある(英国 輸血を通してのvCJD感染3例目 輸血はvCJD伝達の”効率的”メカニズムである恐れ,06.2.10)。

 FDAによると、米国ではBSEは3例発見されただけで、米国でvCJDに感染したケースはまったくないから、米国で生産された牛肉を食べてvCJDに感染した血漿供与者のリスクは極度に低いと考えられるが、米国の少数の供血者が英国、フランス、その他のヨーロッパ諸国への旅行や滞在でBSEに暴露された可能性はあり、従って一定のリスクはあり得る。これら供血者の一部は食事を通してそうとは知らずにvCJDに感染したかもしれず、米国で製造されるpdF[に使われる血漿のプールにこれら感染者の血漿が入った恐れはある。この場合にも供血停止政策で大部分のvCJDリスクは排除れている可能性が高いが、供血停止基準に合致しない供血者や、基準に合致していてもスクリーニング過程の限界で停止されなかった供血者からの残存リスクはあり得る。

 かくて、FDAは、あり得るリスクを推定し、またリスクの決定と軽減にかかわる要因を理解するためのコンピュータシミュレーション・モデルを開発した。このモデルにより、vCJD病原体暴露の確度とレベルと、pdF[製品を利用した重症血友病A患者及び重症フォンウィルブラント病患者のvCJD感染リスクが推定された。

 インプットされたパラメーターには大きな不確実性があるために、アウトプットにも大きな不確実性がある。加えて、vCJD病原体への暴露のレベルやそれが人間の健康にもたらす影響に関する科学的データが欠けているために、感染リスクの推定は正確でない恐れもある。従って、血漿由来製品を通してvCJD病原体に暴露されたかもしれない個別患者へのリスクの正確な推定は不可能という。

 リスクが最大と見られる英国でも血漿製品を繰り返し受け取った人のvCJDのケースは報告されていないことから、pdF[からのvCJDの現実的リスクは非常に低いだろう。それにもかかわらず、FDAは、リスクはゼロではないのだから、このリスク評価の発見と不確実性を医師・患者・公衆と共有するのが適切と信じると言う。FDAは、リスク推定の非常な不確実性に鑑み、リスク評価の発見やその解釈に関する助言を求める。また、理解の改善とリスク軽減を助けるあり得る手段に関しても助言を求めるという。

 この問題に関しては、FDAも例になく慎重なようだ。