BSE等の原因 プリオン仮説への疑念を高める新研究 

農業情報研究所(WAPIC)

06.11.30

 欧州委員会が、狂牛病(BSE、欧州委員会は”mad cow”diseaseと表記している)、スクレイピー、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)などの病原体を異常プリオン蛋白質とする”プリオン仮説”への従来からある疑念を一層強める新たな研究成果について発表した。これは、欧州委員会の第5次研究枠組計画が5年間にわたって資金を供給したSC GUTプロジェクトの成果で、それは、この種の病気の原因の調査に際しては、なおオープン・マインドでなければならないことを示すという。

 Success story: Prion hypothesis challenged by new Sheep study,11.29
 http://ec.europa.eu/research/agriculture/success_prion_en.htm

 異常プリオン蛋白質が最初の感染源ではない可能性があるという理論の根拠は、それが羊の消化管にいかにして吸収されるのかということにある。研究者は、この神経変性疾患を引き起こすと信じられている異常プリオン蛋白質を含む脳の抽出物を羊の腸に接種することでこれを確かめようとした。

 驚くべきことに、接種された異常プリオン蛋白質が消化管壁に検出されたのは接種後の僅かな時間(3.5時間)だけで、病気が生み出すプリイオン蛋白質が蓄積される場所からは検出されなかった。病気そのものが生み出すプリオン蛋白質は接種から1ヵ月後に初めて蓄積され、接種されたプリオン蛋白質が吸収されたように見える場所とは異なる場所に現れた。

 それに加え、実験は、正常な動物においては、接種されたほとんどすべてのプリオン蛋白質は、消化管により吸収され得る前に消化されることを示唆している。このことは、プリオン蛋白質が消化管壁を通過して病気を引き起こすのではないという理論を支持するという。

 新たな発見は、プリオン蛋白質が、もし十分な量吸収されるならば病気を引き起こす可能性を排除するものではなく、あるいは何らかの別のメカ二ズムで神経末端に直接感染する可能性もある。しかし、研究者は、プリオン仮説が伝達性海綿状脳症(TSE)感染の正確な説明にならないかもしれない他の興味深い可能性も熟慮した。従って、このグループの病気の原因の一層の調査が必要だという。