米国内向け牛肉が相次いで韓国へ 米上院議員、輸出チェックもできないUSDA職員は処分せよ

 農業情報研究所(WAPIC)

07.6.23

 米国のベン・ネルソン上院議員が、タイソンフーズの米国内市場向け牛肉が間違って韓国に輸出された問題で、ジョハンズ農務長官はまともな仕事ができない米国農務省(USDA)職員 を停職にするとか、解雇するとか、何らかの処分をすべきだといきまいている。USDAの販売・規制プログラム担当官が、間違いは輸出プロトコル自体でなく、それを実施する人間のせいだと説明したからだ。

 Senator Swinging At USDA Staff For Beef-Export Errors,Cattle Network,6.22

 韓国は昨年、米国産牛肉輸入再開を決めたが、米国が完全除去は不可能と主張する骨の断片が輸入品のことごとくに発見され、輸入は事実上停止したままだった。4月末にクリークストーン社の輸出品がようやく条件をクリアしたのを皮切りに、輸入が順調に伸び始めた。ところが1ヵ月ほど後の5月の末には、今度は骨断片入り牛肉どころか、れっきとした骨付きリブがカーギルとタイソンフーズの輸出品に含まれていることが相次いで発覚、韓国は再び輸入(検疫)を中断した。

 S. Korea's quarantine service finds ribs in U.S. beef shipment,Yonhap,5.30
 米国産牛肉からカルビ、該当事業場に輸出禁止措置
 聯合ニュース 5.30
 
骨付き牛肉は米国内向け、米農務省が調査結果を報告  聯合ニュース 6.4
 米国産牛肉輸入、場合により全面中断の検討も
 聯合ニュース 6.6 

 国内市場向けの箱が輸出に回るのを輸出検査官が見落としたとしか考えられない。このとき、ネルソン議員は、この韓国の措置は不当だと、政府にWTO提訴を迫った。しかし、全米牛生産者牛肉協会(NCBA)は、食肉工場に落ち度はない、国内市場向けの明確なラベルがあるのに輸出されたのは、明らかに食品安全検査局(FSIS)のミスだと、批判の矛先をUSDAに向けた。

 Nelson Seeks Action In Face Of Resumed South Korean Beef Ban,Cattle Network,6.6
 US beef producers blame Dep of Ag for Sth Korea ban,ABC rural news,6.5

  韓国はUSDAの検証結果を待ち、8日に米国産牛肉の輸入検疫を再開した。

 S. Korea lifts ban on quarantine inspection on U.S. beef,Yonhap,6.8

 ところがそれからたった2週間、今週火曜日には、またも米国内市場向けのラベルの付いたタイソンフーズの箱入り牛肉が韓国に輸出されたことが分かった。6月2日の出荷分を調べていたUSDAの調査で判明したらしい。韓国農林省担当官が、USDAからその旨連絡があったと発表した。

 US Beef Mistakenly Exported to SKorea,Chron.com,6.19

 さすがのネルソン議員も、攻撃の矛先をUSDAに向けざるを得なくなったということだろう。

 わが国政府は、米国食肉処理施設査察の結果、問題はないとした。しかし、米国内市場向けの牛肉が輸出されるのがたびたび見落とされているのでは、輸入国国民はたまったものではない。 たまたま後から連絡があったとしても、もう口に入ってしまっているかもしれない。

 とりわけ重大なのは、30ヵ月齢未満の牛に関しては、米国内市場向けならば脳や脊髄など中枢神経組織特定危険部位の除去の義務がないことだ。もしもこのような牛肉が日本の市場に出回ると、脳や脊髄も食べさせられかねないことになる。

 日本は全箱検査をやめるというが、それでは消費者は米国産牛肉から遠のくだけだろう。全箱検査をやめるというのなら、その前に、米国食肉処理施設だけではない、USDAそのものの 食品安全にかかわる輸出管理の体制と能力を検証せねばならない。