伝達性確認の非定型BSE 従来の対策で動物も人間も護れると英専門委員会

農業情報研究所(WAPIC)

07.8.27

 読売新聞の報道によると、動物衛生研究所・プリオン病研究センターなどの研究チームが、長崎県で06年3月に見つかった高齢牛(92年2月)生まれの非定型BSEが他の種の動物に伝達することを確認したという。25日にに新潟県津南町で始まったプリオン研究会で公表したもので、この牛の「脳から抽出した液を、マウスの腹腔に注射。75日後にひ臓を調べたところ、接種した計5匹のマウスすべてで異常プリオンが見つかった」という。

 「非定型BSE」のマウスへの感染性を確認 YOMIURI ONLINE  8.25
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070825i312.htm?from=main3

 このような高齢牛によく見られらる非定型BSE(英国型のBSEとは生化学的特徴を異にする)は、それぞれ極めて少数ながら、イタリア、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ、スウェーデン、ポーランド、スイス、英国、米国などでも発見されており、さらにウエスタン・ブロットのバンドの位置が高い型(H型)と低い型(L型)の二つのタイプが確認されている。だが、どちらの型についても、脳への直接接種での異種動物への伝達は既に確認されている。

 日本の異例に若い感染牛については確認できていないということだが、これと同じL型の非定型BSEが、牛にはもちろん、野生や牛化・羊化・人化されたマウス、人に近いマカク(カニクイザル)に伝達することも既に確認されている。さらに、H形も野生・牛化・羊化マウスに伝達することが確認されている。

 F Tagliavini and T Baron,UNUSUAL CASES OF SPONGIFORM ENCEPHALOPATHY IN CATTLE,SEAC meeting paper,97.
  http://www.seac.gov.uk/papers/97-6.pdf
  SEAC Position statement:New forms of Bovine Spongiform Encephalopathy,07.8.1
  http://www.seac.gov.uk/statements/newforms-bse.htm

 従って、今回の確認は必ずしも新しい発見は言えない。従前の実験結果を再確認するものと言えそうだ。

 しかし、結果が出るまでに時間がかかる経口伝達については、伝達確認例は未だまったくない。また、牛がどのようにして感染するのか(自然発生という説も有力)、発生率についても世界各国の検査体制が大きく異なり、正確な把握はできないから、非定型BSEが動物・人間衛生にどのような意味を持つかは、未だほとんど分かっていないのが実情だ。

 前記の英国伝達性海綿状脳症委員会(SEAC)のポジション・ステーツメントは、このBSEは自然発生したものらしいと言いながら、他の可能性も排除(rule out)はできない、経口伝達は確認できていないが、その可能性も排除はできないと言う。ただ、米国がやめてしまったようなアクティブ検査でこのようなBSEの発見は可能、人間の感染の発見はもっと難しいが、このような場合にも、現在の飼料規制や特定危険部位の除去等の対策で動物と人間は護ることが出来ようと言う。逆に言えば、古典的(英国型)BSEが減り、撲滅されたとしても、なお用心が必要ということになるのだろうか。