韓国 米国産牛肉輸入条件緩和を拒否 OIE基準で人間の健康は護れない

農業情報研究所(WAPIC)

07.10.13

 狂牛病(BSE)にかかわる米国産牛肉の輸入条件の緩和をめぐる米国と韓国の交渉が、米国が”深く失望”する結果に終わった。

 U.S. deeply disappointed at beef negotiations, urges Korea to adhere to scientific standards,Yonhap,10.12

 詳細はなお不明だが、米国はOIEの”管理されたリスク”国としての認定を盾に、OIEの定める”管理された国”の特定危険部位(SRM)ー全月齢の牛の扁桃と回腸遠位部、及び30ヵ以上の牛の脳、眼、脊髄、頭蓋、脊柱ー以外のすべての輸入を迫った。しかし、韓国は30ヵ月以上の牛の肉・肉製品は今まで通りに輸入を認めず、30ヵ月未満の牛についても扁桃、回腸遠位部だけでなく脳、眼、脊髄、頭蓋、脊柱もSRMに指定して輸入を認めないとして譲らなかった。さらに、混入で再三輸入停止が繰り返されてきた背骨以外の骨は認めたものの、尾、腸、脚部の骨の輸入禁止も主張したようだ。

 S. Korea, U.S. at odds over easing beef import rules,Yonhap,10.12

 コナー米国農務長官代理は、これはつべこべ議論する問題ではなく、”国際基準厳守”、”科学厳守”の問題だといきまいたという。当然、日本にも同じ理屈で輸入条件緩和、というより撤廃を求めるだろう。しかし、こんな脅しにしりごみする理由はまったくない。そもそも、現在の”管理されたリスク”のOIE基準で人間の健康が保護されるという"科学的”根拠はまったくないからだ。

 BSEステータスの5段階分類から3段階分類への移行は、OIEが人間の健康保護をないがしろにし、専ら貿易促進を重視する立場に移行したことをはっきりと示すものだ。山内一也東京大学名誉教授は、「5段階分類ではOIEはBSEの清浄化を目的としていた。しかし、3段階分類では清浄化を目指す姿勢はなくなり、リスクを過小評価して対策にかかる経費の節減をはかるという、貿易を推進する立場が明白になった」、それを鮮明に示すのが、新たなサーベイランス基準、「サーベイランスの本来の目的であった、有病率の確認、対策の有効性の確認という目的は失われている」と言う(「米国産牛肉輸入をめぐる最近の問題」 『科学』 2007年9月号)。