米国食肉大手 韓国向け牛肉に月齢区分表示の意向 韓国消費者の不安に対応

農業情報研究所(WAPIC)

08.6.3

 30ヵ月齢以上の牛からの米国産牛肉の輸入を認めた政府に対する韓国消費者の抗議が収まらない。ソウル市民の抗議街頭デモは6月1日で9日目を迎えた。

 「ソウル・市庁前広場でキャンドル文化祭を終え太平路一帯に押し寄せた市民約2万人(警察推算)は、青瓦台(大統領府)方面への進入を防ごうとした警察と世宗路交差点で対峙(たいじ)し、夜を徹してデモを行った。警察は2日午前1時ごろから粉末消火器などを用い車道に広がるデモ参加者3000人余りを退去させ、午前4時半ごろ車両の通行を再開した」という(週末の大規模街頭デモ、土日で約300人を連行 聨合ニュース 6.2)。

 おかげで、政府は、米国に対して30ヵ月齢以上の牛の牛肉の輸出の中断を要請し、返答があるまで輸入検疫を中断することを決めるまでに追い込まれている(鄭雲天長官「30カ月以上の牛肉輸入中断を要請」 聨合ニュース 6.3)。

 このような韓国国民の不安を鎮めようと、タイソン・フーズ、スウィフト、カーギル、スミスフィールドなどの米国大手食肉パッカーが、韓国向け牛肉の箱に、自主的に特別ラベルを貼る意向を表明した。このラベルで30ヵ月齢未満の牛から牛肉か、それとも30ヵ月以上の牛からの牛肉かを示す。このような表示を、最大で120間続けるという。

 U.S. Processors To Offer Temporary Beef Labeling Program For S. Korea,Cattle Network,6.2

 韓国政府だけでなく、米国牛肉業界も困り果てているということだろうか。韓国の輸入延期で、シカゴ商品取引所の2日の牛先物相場はこの2週間で最大の下落となった(Cattle Fall as South Korea Delays U.S. Beef Imports; Hogs Drop,Bloomberg,6.2)。

 ただ、これで韓国消費者の不安が鎮まるとも思えない。米国通商代表部も、ひたすら安全性を強調するほかない。「米国産牛肉は安全だと重ねて説明したい。われわれは3億人の米国人にこれを証言させることができる」と言う(牛肉輸入問題、米USTRは「状況を把握中」  聨合ニュース 6.3)。確かに、米国産牛肉を食べてvCJD(BSEの人間版)になった米国人は一人も「発見」されていない。