農業情報研究所狂牛病 >ニュース:2012年12月28日

ブラジルのBSE確認(第5報) ブラジルがWTO提訴 日本は振り上げたこぶしどう降ろす

 ブラジルはBSE確認を理由に同国産牛肉の輸入を停止した国が来年3月までに停止措置を取り下げなければWTOの下での紛争処理に持ち込む。国際獣疫事務局(OIE)での会合後、ブラジル農業省の担当官が そう語った。

 Brazil warns countries that have banned imports of beef because of atypical BSE,Merco Press,12.26

 OIEは、試験施設のロジスティックな問題で確認が遅れたとはいえ、ブラジルが2億頭も牛の中からごく稀な非定型と見られるBSEを発見したことを評価する。OIEによれば、「無視できるリスク 」というブラジルのBSEリスクステータスは、特別な疫学的状況の変化が認められる場合を除き、BSE確認により自動的に失われるものではない。今回の出来事の疫学的側面は、来年2月の動物病科学委員会の会合で検討され、議論される。

 Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE) case in Brazil: Frequently Asked Questions and Answers,OIE,12.12.21

 ブラジルが3月という期限を切ったのはこの会合を意識したものであろうか。その結果はどうであれ、OIEで採択された国際基準は、国のBSEリスクステータスに関係なく、レッド・ミート(骨を除去した骨格筋)は食べても安全とされている。ただし、WTOのルールでは、一層詳しい情報を待って暫定的輸入制限を行うことは許されている。それでも、今までに輸入停止措置を取った日本、南アフリカ、中国、サウジアラビア、エジプト(パラナ州からのみ)の5カ国は、いずれこの措置の再考を迫られることになる。

 日本には、一方では「管理されたリスク」国のアメリカ等からの輸入を許しながら(一定の条件つきながら)、ブラジルからの輸入は全面停止するという矛盾もある。輸入停止措置を続けるのは難しい。しかし、振り上げたこぶしは簡単には降ろせない。