農業情報研究所


イギリス:輸入牛肉中に特定危険物質(脊髄)を相次ぎ発見

農業情報研究所WAPIC

01.01.31

 イギリス食品規格局(FSA)が、ドイツ等からの輸入牛肉にの輸入牛肉に狂牛病(BSE)病原体に汚染される危険度の高い特定危険物質(SRM)である脊髄の断片が含まれているのを相次いで発見、FSAはその都度善処を求めているが、一向に改善される様子はなく、ナショナル・ファーマーズ・ユニオン(NFU)はEUに対してドイツ牛肉の輸出禁止を求めるに至っている。脊髄は、昨年10月に発効したEU法(委員会決定desision2000/418,00.6.29,EU官報・JOEC,00.6.30)により、EU全体にかかわるSRMとして牛肉から除去する(人間と動物の食物連鎖に入るのを防ぐため)ことが義務づけられている。

 1月には18日と29日の二度にわたりドイツ牛肉から脊髄が発見され、英国はドイツからの輸入牛肉をすべての検査を導入した。その後2月2日にも発見され、このとき、EUのバーン保健・消費者保護担当委員は、ドイツのキュナスト農業・食料・消費者保護相に厳格なコントロールを要求、適切な措置を取るとの回答を得ている(ドイツでは、このコントロールの責任は州にある)。それでも、3月、1日にはドイツとオランダからの輸入牛肉」に、2日にもドイツからの別の輸入牛肉に脊髄が発見された。

 EUバーン消費者保護・食品安全担当委員の怒りは大きく、ドイツが即座に保健・安全規制の強化に動かなければ、ドイツ牛肉の輸出禁止も切迫した課題といっていた。このとき、ドイツのキュナスト消費者保護・農業・食料大臣も憤激、問題の牛肉の輸出元の一つであるノース・ライン・ウエストファリア州の農相に「最も厳しい措置」を求める書簡を送った。

 それにもかかわらず、5日にも、1日に脊髄が発見されたときと同じオランダの会社からの輸入牛肉に再び脊髄が発見されたと発表、バーン欧州委員とドイツ当局に有効なコントロールの迅速な実行を要求する書簡を送るとともに、オランダ農相にも一つの屠畜場における二つの違反に関する書簡を送った。バーン委員は、ドイツ当局に問題工場のライセンスの停止か、適正な措置の実施を求め、ドイツ当局は二つの屠畜場のライセンスを停止させた。

 EU法違反事件はさらに続く。12日には、スペインからの輸入品に、21日にはイタリアからの輸入品に、31日には、またもやドイツからの輸入品に脊髄が発見された。いわば「狂牛病後進国」の狂牛病コントロールは、非常にズサンであるようだ。

 (注)イギリスでは、狂牛病の人間版である変異性クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)を防ぐために、1996年以来、リスクが高い30ヵ月齢以上の牛(「牛肉保証スキーム」の下で登録された牛、リスクが非常に小さいともなされる14カ国からの輸入肉は除く)の輸入肉が食物連鎖に入ることを禁じている。脊髄が発見されたドイツ牛肉には30ヵ月齢未満の牛のものという証書が付されていた。このため、FSAは、ドイツからの輸入牛肉についは、月齢を問わず、すべてについて検査を始めた。

 これらの情報については、各日付のFSAニュース・レリースNFUニュース・レリースを参照のこと。