ビスフェノールAが乳癌のリスクを高める―新研究

農業情報研究所(WAPIC)

05.6.1

 5月27日付の”ネイチャー”のニュースが、多くの硬質プラスチックに含まれ、熱をかけると溶出して食品に浸透するとされ、環境ホルモンの疑いをかけられているビスフェノールA(BPA)が乳癌のリスクを高める可能性があるという新たな研究について報じている(注)。この化学物質は歯科の充填材や飲食料品容器となるブリキ缶の裏張りにも使われるというから、事は一層重大だ。

 この物質は発情ホルモン・エストロゲンを擬態することが知られており、エストロゲンは胎児の生殖システムやその他の器官の発達に大きな役割を演じるから、子宮でBPAに曝されると問題が起きる可能性があると心配されている。子宮でBPAに曝されたマウスの最近の研究は、この人工物質が雄の前立腺の異常な肥大を引き起こしたことを発見しているという。

 新たな研究は雌のマウスに対するこの物質の影響を調べたものである。今回の研究は、環境的に適切とされる低容量のBPAへの出生前の暴露の影響を調べることを目的に、1日当たり・体重1s当たり250ナノグラムに曝した。出生4日後にこの処理を止め、発情が可能になる30日齢まで待って卵巣を除去した。自身でエストロゲンを出すのを止め、BPAの影響の計測を可能にするためである。

 子宮中でBPAに曝されたマウスは、対照群に比べ、乳腺諸部位の組織を大きく発達させた。乳腺乳管域につながり、人間やネズミで癌が発生する場所であるterminal end budsと呼ばれる乳腺組織は4倍にも増えた。もともとの研究報告によると、その一方で、細胞自殺活動は減退した。プロゲステロン受容体陽性[エストロゲンが癌細胞に入りこみ、癌細胞の増長に影響を与える]の乳管上皮細胞の大きな増加も見られたという。

 著者のSoto氏は、これは実験動物に関する結果だが、人間にも影響があるかもしれないと言っている。結果の人間への拡大適用は慎重でなければならないが、BPAは、恐らく人間の乳癌のリスクを高めると信じていると言う。ただし、人間に関する調査は、出生から普通に乳癌が起きる年齢である50歳まで監視しなければならないから、難しいと言う。

 (注)Mouse study claims plastics pose cancer risk,new@nature,5.27http://www.nature.com/news/2005/050523/full/050523-12.html