米国環境保護庁 有機燐農薬・アジンフォス-メチルの段階的廃止を提案

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.13

 米国環境保護庁(EPA)が果樹・園芸作物に最も広く使われている農薬・アジンフォスメチル(AZM)の利用を2010年までに段階的に停止することを提案した。アーモンド、芽キャベツ、ピスタチオ、クルミ、苗木への使用 は2007年まで、リンゴ、ブルーベリー、チェリー、パセリ、ナシへの使用は2010年までに段階的に停止する。また、この移行期間中、年間施用量の削減、労働者の監視の強化、水路近くでの散布禁止区域の拡大など、リスクを最小限にするための追加措置も提案している。EPAは、これら作物の生産者が利用可能なより安全な代替品に切り替えることを期待する、AZMの他のすべての利用は、製造者により自主的にキャンセルされてきたと言う。

 この提案は2ヵ月間のパブリックコメントに付される。

  EPA:Proposed Phaseout of Azinphos-Methyl and Longer Restricted Entry Intervals for Phosmet
  http://www.epa.gov/pesticides/op/azm/phaseout_fs.htm

 AZMは有機燐殺虫剤で、人間や水棲生物に重大な危害を与えるとされてきた。EPAは2000年、小売業者に対し、広く使われていた他の二つの有機燐農薬ークロルピリフォスとダイアジノンーの家庭・ガーデンでの利用のための販売の段階的停止を命じた。また、一部作物へのいくつかの有機燐剤の利用を段階的に廃止する、果樹園労働者のAZMへの暴露を制限するルール(保護衣着用など)を設定するなどの対策も講じてきた。

 それにもかかわらず、2001年のEPAの調査は、この農薬が農場労働者に容認できないリスクをもたらしていることを明らかにした。ワシントン州ではリンゴ園面積の70%でこれが散布されており、毎年数千の農場労働者の健康被害を生んでいるという。

 EPAの今回の提案の引き金となったのは、このような事実に触発された農場労働者と環境団体が合流してのシアトル地裁への提訴であった。この訴訟は、今年初め、8月までにEPAが決定を下すことに同意することで落着した。

 EPAは、この農薬は重要だが、2001年のリスク評価以来、多くの新たな代替農薬が登録されてきたことに留意したという。ただ、これらの農薬のコストはAZMよりも高く、施用は一層の正確さを要 する。専門家は、生産者が適切な施用技術を学び、その有効性を信頼するようになるまでには時間がかかり、漸次の導入が重要と指摘しているという。

 しかし、原告の代表者は、提案の方向は歓迎するが、移行期間が長すぎる、これに受け入れ難いリスクがあるとすれば、労働者をこれに曝し続けることは倫理にもとると批判している。他方、果実生産者を代表するノースウエスト園芸委員会は、この農薬が非常に長期にわたり大きな役割を演じてきたことは誰も否定できないと 、この提案を吟味しているところだと言う。

 EPA wants insecticide phased out by 2010,Seattle Times,6.13
 http://seattletimes.nwsource.com/html/localnews/2003057715_pesticidephaseout13m.html?syndication=rss

 なお、AZMについては、わが国の農薬等残留に関するポジティブリスト制度の対象とされ、残留基準も設定された。しかし、EPAは、その多くの代替農薬については未だ国際残留基準がないとしている。