フランス 農薬のリスクを減らす06-09年行動計画 危険な農薬の販売量の半減を目指す

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.1

  フランスのエコロジー相と農業相が28日、農薬のリスクを減らすための2006-2009年行動計画(*)を閣議に提出した。それは、最も危険な農薬ー発癌性・突然変異誘発性・生殖に有害な物質ーの販売を2009年にまで半分に減らすことを目指す。これらの物質は、フランスで毎年販売される農薬総量の10%ほどを占めるだけだが、環境と人間の健康にとってのリスクの50%がこれらの物質から来るという。

 *Plan interministeriel de reduction des risques liés aux pesticides 2006-2009
    http://www.ecologie.gouv.fr/IMG/pdf/Plan_interministeriel_pesticides.pdf

  このような計画を策定するに至った理由は次のように説明されている。

 2004年の農薬販売量に関して、フランスは世界第3位、ヨーロッパで第1位(活性物質で75,100トン、その90%は農業向け)、草地を除く耕地1ha当たりではヨーロッパで第4位になっている。これらの農薬の使用は農産物の収量や品質に影響を与える有害生物の防除という本来の役割を超え、人間(空気、水、食料によりこれらに暴露される利用者や一般人)と生態系(生物多様性)に対する直接的・間接的リスクをもたらし得る。科学研究が明らかにした次のような事実は、この問題を社会の中心問題に押し上げた。

 -水の農薬汚染が広がっている。地表水の80%、地下水の50%から農薬が検出されており、すべての水を生態的・化学的に良好な状態にするという2015年までの目標は、今のところ、地表水の3分の1、地下水の半分についてしか達成されていない。水道水の99%は農薬に関する水質基準を満たしているが、2003年、フランス人口の9%は、少なくとも一度は基準を満たさなかったことのある水道水を使っていた。

 -土壌、大気からも一定の農薬が検出されている。例えば、土壌には10年以上前に禁止された有機塩素剤が多量に残留している。

 −因果関係は立証されていないとはいえ、疫学的研究を通し、慢性(先天的奇形、癌、リンパ筋腫など)または急性の人間の健康へのあり得る影響も示唆されている。例えば、農業者の癌は他の人々よりも少ないが、一定の特別の癌についてはリスクが高まることが確認されている。

 行動計画によると、第一に農薬評価手続とその流通及び利用に関連したリスク管理を改善する。とりわけ、農薬販売のトレーサビリティーを確保する。

 農薬販売許可に先立つ評価を委ねられるフランス食品衛生安全庁(AFSSA)が組織的に強化される。ただし、最終的な許可の決定は農業省に委ねられる。保健省・エコロジー省の共同決定を要求していた環境団体の期待は裏切られた。

 さらに、発癌性、突然変異誘発性、及び生殖有害物質の販売を減らすために、これら製品にはフランス水機関が徴収する水使用料の名目で、活性物質1kg当たり3€(約440円)を課税する。《庭園における使用許可》の表示がない農薬の庭園愛好者への販売は禁止し、また農薬の流通と利用が適正になされているかどうかの監査を強化する。

 第二に、農薬依存を減らし、また環境リスクの高い慣行を改めるために、技術の普及活動や財政的刺激を通して、農薬使用がより少ない生産の方法とシステムを奨励する。農薬の水中へ流入を制限するために、水路から5m以内を農薬不使用区域とすることが義務化される。

 第三に、情報と利用者保護の強化のために、承認された農薬関係業者・流通業者・施用者の職業団体を衛生・環境リスクに関連した一つの部門に統合する。農村における医業もこれを構成し、流通業者は農薬と共にそれぞれに適合した保護具も販売することを奨励される。

 しかし、農薬に関しては、どんな製品が購入され、どのように使用されているのか、生物多様性や人間の健康への長期的影響はいかなるものかなど、なお未解明な問題も多い。そこで、第四に、これら未解明な問題への理解を改善するための措置も講じる。

 健康への農薬の影響に関する理解を深めるための疫学的研究を強化する。また、人々と生態系の農薬暴露の実態を明確にし、インターネットサイトの開設で公衆への情報を改善するために、新たに設置される農薬残留観測所(http://www.observatoire-pesticides.fr)が環境中の農薬の存在に関する情報を集め、評価する。

 最後に、計画の進捗状況を評価するために、市民に公開される計画有効性追跡委員会が設置される。この評価はリスクの総合的指標に依拠するものとする。

 このような行動計画の目標が実際に達成されるかどうかは不透明だ。今後の進展を見守るほかないが、ル・モンド紙によると、環境団体は農薬減らしのための最も直接的な手段である課税の額は不十分と判断している。また、計画が数値目標を欠いていること、汚染を減らす耕作方法に対する財政支援が不十分であることも指摘、「計画は農薬消費を減らすことを可能にしなかった現行措置を連想させるだけだ」だと厳しい見方をしている。

 Un plan pour réduire la vente des pesticides les plus nocifs,Le Monde,6.29
 http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3228,36-789666@51-789790,0.html