カリフォルニア州 ピレスロイド系殺虫剤の規制強化へ 深刻な水系汚染を回避

農業情報研究所(WAPIC)

06.7.15

  カリフォルニア州農薬規制局が家庭用殺虫剤として大量に使われているピレスロイド系殺虫剤の使用制限を検討している。13日、およそ600のピレスロイド系殺虫剤メーカーに対し、来月、その使用の是非を再評価していること知らせる通知を送ると発表した。通知を受け取ったメーカーは、製品の毒性と水系蓄積に関する情報の収集を始めることに60日以内に同意しなければならない。これを拒否すれば、製品の承認を取り消し、カリフォルニアでの販売を禁止するという。ロサンゼルス・タイムズ紙が14日付で伝えた。

 Household Pesticides Scrutinized,The Los Angeles Times,7.14
 http://www.latimes.com/news/local/la-me-insecticides14jul14,1,2406669.story?coll=la-headlines-california

 ピレスロイドは、除虫菊に含まれるピレトリンと呼ばれる天然殺虫成分を真似た人造合成化合物だ。わが国では蚊取線香や家庭用殺虫剤の成分としてよく知られている。米国では、環境保護庁(EPA)が特に子供に有害として段階的廃止を決めたダイアジノンやクロルピリフォスなどの有機燐系殺虫剤に代わる人間やその他の哺乳動物、鳥には最も毒性が弱い殺虫剤として、使用が急増している。

 特にペルメトリンと呼ばれる成分は、芝生・室内・ペット用に広く使われ、害虫駆除業者や農民によっても散布されている。最近では、多くの自治体も、西ナイルウィルスの拡散を防止するための蚊の駆除用に使うようになっている。

 カリフォルニアの農民と駆除業者によるピレスロイドの使用は、1999年には42万ポンドだったが2004年には110万ポンドにも増えている。この数字には一般消費者への販売分は含まれておらず、それを含めればこれを遥かに超える量が使用されていることになる。

 ところが、昨秋、カリフォルニア大学バークレー校の研究者により、この殺虫剤が北カリフォルニアの都市郊外の河川を汚染、生態系に死活的に重要な甲殻類動物や昆虫を一掃しつつあることが明らかにされた。ピレスロイドは、もともと人間や哺乳類・鳥類には比較的無害であるとしても、無脊椎動物の神経細胞への毒性は知られている。

 バークレー校の研究者によると、ピレスロイドは流れに入り、沈泥に蓄積する。多量のピレスロイドが蓄積したサクラメント郊外のクリークからは、hyalellaと呼ばれる小さな甲殻類動物が消えてしまった。しかし、その蓄積が少ない近隣の流れには生息していた。実験室の試験では、このクリークの沈泥のほとんどすべてのサンプルが甲殻類動物を殺してしまったという。

 ところが、沈泥中のエビに似たこの甲殻類動物は、小魚、蛙、サンショウウオ、水棲昆虫の重要な餌になっており、その存在は健康な水路の指標にもなっている。クリークで最も毒性が強い成分は、駆除業者により家屋周辺で散布され、芝生に散布される家庭用製品にも見られるビフェンドリン(ピレスロイド系殺虫剤の一種で、シロアリ防除にも使われる)だった。農場や蚊の駆除のためのピレスロイドは、このクリークでは検出されなかったという。

 ロサンゼルス地域では検査されていないが、セントラルバレーの河川のおよそ20%が甲殻類に有害なレベルのピレスロイドを含み、モントレー地域やインペリアルバレーのクリークでも検出された。

 州農薬規制局はこうした研究結果を深刻に受け止めたわけだ。

 農薬メーカーを代表するクロップライフ・アメリカのスポークスマンは、毒性問題があるということには同意しないが、製品の使用法の分析はしている、「農業や都市での使用を通してピレスロイドがなした有益な貢献は多大で、これらの便益が考慮される必要がある」と言う。

 州当局も、ピレスロイドが他の薬剤よりも安全であることや、とりわけ西ナイルウィルスとの戦いにおけるその重要性を考え、規制の焦点はその使用法に置くようだ。EPAはどれほどの量を使用すべきかの表示を義務付け、また水路から100フィート以内での使用を禁止している。しかし、州当局者によると、今や一般消費者が大量に使っているから、これだけでは不十分ということだ。

 問題は物質そのものではなく、誤用をいかに防ぐかだが、「製品をすべて排除せなばならないかもしれない」、あるいは水路への流入がもっと起こりにくくする別の形の製剤を義務づけることになるかもしれないと言う。