乳癌のリスク 農場で働いたことのある女性で高い 農薬が関連かーカナダの新研究

農業情報研究所(WAPIC)

06.10.12

 カナダのグローブ・アンド・メイル紙によると、2000年から2002年までに乳癌に罹ったオンタリオ州・ウィンザーの女性のほとんどすべての職業を調査した研究チームが、農場で働いたことのある女性がこの病気に罹るリスクが高いことを発見した。

 Scientists find farm link to breast cancer,Globe and Mail,10.12
 http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20061011.wxcancer12/BNStory/specialScienceandHealth/home

 この間に乳癌で治療を受けた564人の女性の職歴と、無作為に選ばれた乳癌にならなかった同数の女性の職歴を比較すると、乳癌になった女性は、農場で働いたことのある女性で2.8倍、農場で働いた後に自動車工場で働いた女性で4倍、農場で働いた後にヘルスケアの仕事をした女性で2.3倍多いことが分かった。農場で働いたことがなく、その後自動車工場で働いた女性には追加リスクはなかかった。

 この研究は、乳癌になった女性の職業に関するカナダで最も詳細な調査の一つで、農業にかかわる何かがこの病気のリスクを高めることを示唆している。研究者は、その原因は決定しなかったものの、その多くがエストロゲンその他のホルモンの正常な機能を擬態するか、阻害する農薬ではないかと推測した。リスクを高める最もありそうな原因について仮説を立てようとすれば、農場に存在する化学物質を考えねばならないと言う。

 ウィンザー地域は、カナダで最も集約的な農業地域の一つであるから、農業に従事する女性は非常に多い。この地域は、同時にカナダ最大の自動車産業も持つ。この研究では、約300人の女性が農業で働いていた。乳癌になった女性とそうでない女性では、ホルモン代替治療、授乳暦、喫煙、経口避妊薬の使用、母親の癌暦などに関する違いはほとんどなかったという。

 この研究は、12日、Annals of the New York Academy of Sciencesに発表される。

 記事によると、遺伝的素因を持つことを知られている女性はこの病気を持つ女性の10%足らずだから、世界中の科学者が先進国における最近の乳癌の蔓延の説明に苦労している。カナダでの発生率は世界最高で、生涯に9人に1人が乳癌になるリスクがある。年齢で調整された発生率は過去30年に25%増加したが、原因は分かっていない。

 過去の研究は、乳癌と女性の社会経済的地位、食事、初任年齢などとの関連を発見したが、大多数の患者は既知のリスク要因を持っていない。研究を主導したジム・ブロフィ博士は、職業をもっと詳しく調べるべきだ、乳癌を持つ人の生涯の職歴が分かれば、現在は考えられていないリスク要因が明らかになるかもしれないと言う。