EU 高度有毒農薬を禁止 空中散布も禁止 新農薬法制定へ

農業情報研究所(WAPIC)

08.12.22

  新たなEU農薬法制定をめぐって対立していた欧州議会とEU閣僚理事会が12月18日、がんや神経・ホルモン・遺伝障害を引き起こす可能性のある化学物質の禁止や、農薬空中散布禁止などを含む調整案に合意した。来年1月の欧州議会本会議で採択され、1991年以来のEU農薬法が抜本的に改正されることになる。

 Pesticides: MEPs and Council reach agreement,European Parliament,12.18
 http://www.europarl.europa.eu/news/expert/infopress_page/064-45244-350-12-51-911-20081218IPR45243-15-12-2008-2008-false/default_en.htm

 18日の合意は農薬の生産と許可に関する規則と農薬の”持続可能な利用”に関する指令にかかわる。

 前者に関しての主要合意事項は次のとおりである。

 ・承認される”活性物質”(農薬の化学成分)のポジティブリストをEUレベルで作成する。農薬はこのリストに基づき、国レベルで承認される。

 ・遺伝毒性、発がん性、生殖毒性のある一定の高度に有毒な化学物質は、実際に影響が無視できるのでないかぎり禁止される。

 ・神経・免疫発達毒性物質やホルモン撹乱物質は、それが重大ななリスクを呈すると見られるならば禁止される。

 [上記によって禁止の対象となるのは22種類の化学物質である]

 ・植物保健に対する深刻な危険と闘うために必要な物質は、安全基準を満たさなくても最大5年間は承認することができる。

 ・一定の有害物質を含む製品は、代替物質の存在が示されれば、これに置き換えられる。置き換えの期限については、閣僚理事会は5年としていたが、議会の3年という主張が通った。

 ・加盟国は国レベルでか、EUを北部・中部・南部の三つの分けた区域内での相互認証を通じて農薬製品を許可できる。ただし、欧州議会の主張により、加盟国は、例えば特別な環境あるいは農業の状況を理由に、製品を禁止することが可能とされた。

 この新規則は既存の法に漸次置き替えられる。現行規則の下で販売できた農薬は、既存の許可期限が切れるまで利用できる。従って、一挙の大規模な市場からの撤去は起きない。

 持続可能な利用に関する指令に関する主要合意点は次のとおり。

 ・農薬利用を50%削減するという欧州議会の要求は取り下げられた。加盟国は、農薬使用のリスクと人間の健康と環境への影響を減らし、病害虫統合防除や代替防除の方法を奨励するための数量的目標、措置、タイムテーブルを含む国家アクションプランを採択する。

 ・空中農薬散布は一般的に禁止され、例外的散布は当局の承認に従う。空中散布の許可申請は適切な期限内になされねばならない。

 ・加盟国は、水生環境と飲料水供給を農薬の影響から保護する適切な措置を取らねばならない。これには、農薬が使用または貯蔵されてはならない水生生物保護のための緩衝区域や飲料水のために利用される表流水・地下水保護区域が含まれる。

 ・公園、公共庭園、運動・レクレーション場、学校運動場などの一般公衆や弱者グループが利用する特別の地域やヘルスケア施設の近辺では、農薬使用を禁止するか、少なくとも最小限に抑える。


 日本では、食品に残留さえしていなければ[事実場]お咎めなしということらしい。野放しの農薬散布の影響など、調査、確認さえしようとしない。

  ヨーロッパでも、農薬減らしの実効がどこまで上がる分からない。野菜の値段が上がる、競争力が落ちるなどと商業的農家の不満は大きい。蜜蜂減少も止まらないかもいれない。ただ、高度有毒農薬が禁止となれば、毎日の散歩で農薬に曝される犬が白血病でバタバタなどという現象は減るかもしれない。