ほとんど無規制の包装化学物質からの食品汚染に注意を―スイス研究者

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.13

 ダイオキシン、重金属などの環境汚染物質による食品汚染が大きな注意を集めているが、食品包装に由来する生体異物、特にホルモン撹乱(可能性)物質は、いたるところで使用されながら、ほとんど注意を受けることがなかった。大部分の人は、食品包装について何の心配もしていない。

 しかし、あらゆる種類の食品の容器として使われる缶、箱、瓶などは、正常なホルモン機能を撹乱する合成物質への主要な暴露源をなしている。や瓶の内部のライナーとして使われるプラスチックは、それ自体が多くの添加物、触媒、その他の物質の混合物で、潜在的にはすべての食品・飲料がプラスチックに接触する。米国、EUで食品包装に使うことを許されているホルモン撹乱化学物質は、少なくとも50種類にのぼる。

 それにもかかわらず、これらの容器から食品に移行する多くの物質は同定されておらず、食品に移行する化学物質の種類と量、人の暴露、長期的健康影響に関する情報が必要だ。

 特にビスフェノールA(BPA)などホルモン撹乱物質は、低濃度であっても、慢性的暴露は毒性学的に問題とされている。類似の作用を持つ多種のホルモン撹乱物質の混合物に、あるいは感受性の高い発達時期に暴露されるときには、懸念は一層増す。食品包装へのこれら物質の広範な使用は、専らこれに向けられたアセスメントを必要とし、最新の科学的知見に従って見直されるべきである。

 このように主張するスイスの環境毒性学者・Jane Muncke博士の新たな研究が発表された。これは、140を超える科学的報告のレビューを通じ、包装化学物質が食品や飲料にどの程度移行・残留するかをサーベイした最初の試みという。これらの報告の多くが、包装からの移行物質による汚染を発見している。この研究は、特にBPAに焦点を当てた。

 研究は、乳癌、前立腺癌、肥満、インスリン抵抗性、自己免疫疾患などのホルモン関連病の発生が増加しており、これが化学物質汚染と関連している可能性を研究する必要があると指摘する。

 Jane Muncke,Exposure to endocrine disrupting compounds via the food chain: Is packaging a relevant source?,Science of the Total Environment,Volume 407, Issue 16, Pages 4549-4786 (1 August 2009)