安全ともてはやされる電子タバコから発癌物質や有毒化学物質 米国FDAの分析

農業情報研究所(WAPIC)

09.7.23

  「近年、日本を含む各国で「電子タバコ」の人気が高まっている。これはタバコの形に似たスティック状の電子機器のこと。タバコのように口にくわえて息を吸い込むと、タバコに似た味の蒸気を楽しめる商品だ。これを気軽な禁煙ツールや新種の嗜好品として楽しむ愛好家が世界中で増えている」ということである。

 Nikkei BP net,09.7.10
  http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090709/166362/

  面白がって取り上げる新聞やテレビもあるようで、それが愛好家を増やす一つの要因になっているかもしれない。しかし、米国食品医薬局(FDA)が行った予備的分析によると、電子タバコは有毒物質や発癌物質を含むということである。7月22日のFDA News Releaseがこの事実を発表するとともに、警告を発した。

 FDA News Release:For Immediate Release: July 22, 2009
  FDA and Public Health Experts Warn About Electronic Cigarettes
  http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm173222.htm

  この発表によると、いくつかの電子タバコのサンプルを分析したところ、不凍液として使われるジエチレングリコールなどの発癌物質や有毒化学物質が含まれることが分かった。

 電子タバコは、一般的にはニコチン、フレーバー、その他の化学物質で満たしたカートリッジを含むバッテリーで操作するデバイスである。それは、高度に中毒性のニコチンや、その他の化学物質を、ユーザーが吸い込む蒸気に変える。

 これらは若者に向けて宣伝され、販売され、オンラインやショッピングモールで手に入れることができる。加えて、これらは、FDAが承認したニコチン代替品や通常のタバコに類似の健康に関するいかなる警告も含まない。また、若者にアッピールするように、チョコレートやミント など様々なフレーバーを持つものも出回っている。

 従って、公衆衛生専門家は、若者の電子タバコがニコチン中毒とタバコ利用を増やす恐れがあると懸念を表明、その使用に関連したあり得るリスクを議論したという。

 これらの製品は、評価または承認のためにFDAに提出されてこなかった。従って、当面、FDAは、今回の限定されたテスト以外、様々なブランドのこれら製品が含むニコチンのレベルや、他の化学物質の種類と量を知る手段を持たない。

 今回、FDAの薬剤分析課は、二つの代表的ブランドの電子タバコのカートリッジの少々のサンプルの成分を分析した。一つのサンプルからは、不凍液として利用される人間に有害な化学物質・ジエチレングリコールが検出され、他のいくつかのサンプルからは、ニトロソアミンなどの発癌物質が検出された。これらの検査は、これらの製品がユーザーが暴露される恐れのある、検出可能なレベルの既知の発癌物質や有毒化学物質を含むことを示している。

 電子タバコは中国で開発されたもので、米国で販売される電子タバコも中国製がほとんどのようだ。FDAは、これまで国境で検査、輸入を差し止める努力をしてきた。それでも、オンラインやショッピングモールで手軽に買える。有効な取締りは難題のようだ。

  [なお、日本では、ニコチン入り電子タバコはほとんど販売されていないようだ。ただし、他の成分に何が使われているのか、何を吸引する恐れがあるのか、製造・販売者の情報からは何も分からない]