フランス食品安全機関もビスフェノールAの「微妙な影響」に懸念 データ収集・毒性発見方法開発を勧告

農業情報研究所(WAPIC)

10.2.6

 先日、米国食品医薬局(FDA)が従来の態度を変え、食品・飲料缶やプラスチックボトルなどに含まれるビスフェノールA(BPA)の人間の健康に対する影響に一定の懸念を表明したと伝えたばかりだが(米国FDA 食品容器のBPAに対する態度を変更 胎児・幼児の脳・行動・前立腺に影響の恐れ,10.1.16)、今度はフランス食品衛生安全機関(AFSSA)も同様な懸念を表明、当面の対策として、母乳、乳幼児、乳児用ミルク中のBPAの存在に関するフランスにおけるデータ収集や非常に低用量のBPAの人間へのあり得る毒性を発見するのに適した方法の開発を勧告、さらには消費者に対しても一定の予防的行動を喚起した。

 2月5日のAFSSAの発表によると、2009年10月、AFSSAは内部の専門家パネルに新たな研究や最近の国際的科学文献の検討を委嘱した。その結論は、今までの研究の方法はデータの公式な解釈を可能にしないということだった。ただし、「一定の微妙な影響、特に子宮内及び生まれて数カ月の間の暴露に続くラットの子に観察された行動への影響が、これらの警戒信号の人間の健康にとっての意味を確かめ、また消費者に知らせ、当局が適切な行動を取ることを可能にするために、欧州食品安全機関(EFSA)や保健機関の国際的ネットワークと共同して専門的評価を行うようにAFSSAを導いた」という。

 その上で、当面、次のことを勧告するという。

 ・母乳・乳児・乳児用ミルク中のBPAの存在に関するフランスにおけるデータの収集。また、室内ダスト、水など、食品と接触する他のBPA暴露源の調査も勧告する。

 ・代替製品やホルモン撹乱物質一般に加え、非常に低用量のBPAの人間に対するあり得る毒性を発見するのに適した方法の迅速な開発。AFSSAは、この問題をヨーロッパレベルの問題に格上げする。

 そして、消費者に対しては、単なる予防措置として、ポリカーボネート製の哺乳瓶や容器を使うときには、液体食品(水、ミルク、スープなど)を非常な高温で熱することを避けて欲しいと言う。

 Bisphénol A : l'Afssa préconise le développement de nouvelles méthodes d'évaluation,AFSSA,2.5
 http://www.afssa.fr/PM9100B601.htm

 わが国では、厚生労働省の諮問を受けた食品安全委員会が問題を検討中だ。昨年11月12日の最新会合の評価案では、

 これまでに報告されているBPAの低用量曝露による影響を示唆する知見からは、現時点において、BPA の低用量の曝露による影響を結論付けることは困難であると考えられた。

 BPA の低用量曝露による影響については、低用量の影響を正確に確認できるように試験環境、試験動物、観察指標等を適切かつ厳密に制御した試験系を確立した上で、その試験系によって実施された知見を集積するとともに、低用量影響の機序的な考察を可能とするために、得られた知見を根拠付ける多面的なアプローチによる知見も集積した上で、必要に応じて再検討を行う必要があるものと考えられた。」とされている。

 http://www.fsc.go.jp/senmon/kiguyouki/k-y-wg-bpa-dai7/k-y-wg-bpa7-siryou2.pdf

 今までのFDAやAFSSAと同じような態度と言えようか。FDAやAFSSAの態度変更は最終案にどう影響するだろうか、しないだろうか、ちょっとした見ものである。